国際シンポジウム ドイツの労使関係の特徴と新型コロナが雇用に与えた影響-日本との比較-

2023年2月8日(水)、国際シンポジウム「ドイツの労使関係の特徴と新型コロナが雇用に与えた影響-日本との比較-」を対面で実施しました。

ドイツと日本は新型コロナの感染状況や行動制限の手法などに一定の違いがある一方で、日本では雇用調整助成金、ドイツでは操業短縮手当の拡充など強力な財政支援が行われている点で共通しています。本シンポジウムでは、経済水準や新型コロナ感染拡大による社会経済への影響に日本との類似点が多いドイツにおける労使関係の特徴やその政策について詳しく説明をしていただきました。

また、それぞれの労働慣行や課題の違いとその背景にある考え方を比較し、ドイツの経験と事例を紹介していただきました。

パネルディスカッションでは事前にいただいていた参加者の皆様からの質問を基に、日本とドイツの雇用政策の違いや、コロナ禍で広がった新しい働き方などについて興味深い議論を行っていただきました。

 

【講演】

日時 2023年2月8日(水) 13:30~17:30 
プログラム

【第1部】

基調講演及び解説
(基調講演)
・コロナ禍におけるドイツの労働法と政策
Prof. Dr. Matthias Jacobs(マティアス ヤコブス) (Bucerius Law School, Hamburg)

講演の概要はこちらからご覧いただけます。
講演資料

(解説)
・日本とドイツの労働政策や制度の異同
東北大学大学院法学研究科 教授 桑村裕美子氏

講演の概要はこちらからご覧いただけます。

(講演)
・ドイツの労働政策や制度の実際
Dr. Tobias Schiebe(トビアス シーベ) ドイツ法弁護士, ARQIS Foreign Law Office, Tokyo

講演資料

【第2部】

パネルディスカッション 

「ドイツの労使関係の特徴と新型コロナが雇用に与えた影響-日本との比較」
(モデレーター)東京大学大学院法学政治学研究科 教授 荒木尚志氏
(パネリスト) Matthias Jacobs氏、桑村裕美子氏、Tobias Schiebe氏

事前に聴衆の皆様よりいただいていた質問を基に以下の観点でディスカッションを行いました。

  • コロナ禍におけるセーフティーネットの日独比較(短時間労働者、フリーランス・個人事業主の法的地位)
  • 病気休暇の取扱いの違い
  • コロナ禍で広がった新たな働き方をめぐる問題(テレワークの労働時間管理、テレワークの一方的命令の可否、ゼロ時間契約の取扱いなど)
  • 事業所委員会の共同決定制度へのインパクト
講師陣

【講演】

マティアス ヤコブス 氏
Professor, Bucerius Law School, Hamburg

ドイツの労働法研究の専門家として第一線で活躍している。研究分野はドイツ労働法(特に集団的労働法)、ヨーロッパ労働法。

【略歴(職歴)】

  • 1992年~2004年 University of Mainz

  • 2004年~2005年 University of Mannheim and University of Bielefeld

  • 2005年~ Professor, Bucerius Law School, Hamburg

【その他の主要な役職】

  • Vizepräsident des Deutschen Arbeitsgerichtsverbands e.V.

  • Mitherausgeber der Zeitschrift für Arbeitsrecht (ZfA), der Neuen Zeitschrift für Arbeitsrecht (NZA), der "Schriften zum Arbeits- und Sozialrecht (SAR)" und der "Studien zum Arbeitsrecht"

  • Mitglied des Vorstands des Hamburger Vereins für Arbeitsrecht e.V.

  • Mitglied im Beirat von EIAS (Europäisches und Internationales Arbeits- und Sozialrecht)

  • Programmdirektor der Bucerius Education GmbH – Executive Education

  • Vertrauensdozent der Stiftung der deutschen Wirtschaft (Regionalgruppe Hamburg)

【主要著書】

  • Tarifeinheit und Tarifkonkurrenz, 1999

  • Der Gegenstand des Feststellungsverfahrens – Rechtsverhältnis und rechtliches Interesse bei Feststellungsstreitigkeiten vor Zivil- und Arbeitsgerichten –, 2005

  • Arbeitsrecht (von Manfred Lieb und Matthias Jacobs; Reihe: Schwerpunkte), 9. Aufl. 2006

  • Tarifvertragsrecht (von Matthias Jacobs, Rüdiger Krause, Hartmut Oetker und Claudia Schubert), 2. Aufl. 2013

  • Spezialisierung der Unionsgerichtsbarkeit im Arbeitsrecht – Fachkammer für Arbeitsrecht am EuGH, 2016 (gemeinsam mit Matthias Münder und Barbara Richter)

  • Kommentierung der §§ 542-591 ZPO, in: Stein/Jonas (Begr.; Hrsg.: Reinhard Bork, Herbert Roth), Kommentar zur Zivilprozessordnung, Band 6 (§§ 511-703d ZPO), 23. Auflage 2018

  • Kommentierung der Einleitung und des § 4a TVG, in: Wiedemann (Hrsg.), Tarifvertragsgesetz, 8. Auflage 2019

  • Verhältnismäßigkeit des Streiks, in: Arbeitskampfrecht – Handbuch für Wissenschaft und Praxis (Hrsg.: Tino Frieling, Matthias Jacobs, Christopher Krois), 2021

  • Kommentierung des Gesetzes über die Beteiligung der Arbeitnehmer in einer Europäischen Gesellschaft (SE-Beteiligungsgesetz, SEBG), in: Münchener Kommentar zum Aktiengesetz (Hrsg.: Wulf Goette, Mathias Habersack, Susanne Kalss), Band7, 5. Aufl. 2021

  • Kommentierung der §§ 9-15, 74-76a BetrVG und der WahlO zum BetrVG, in: Gemeinschaftskommentar zum Betriebsverfassungsgesetz (bearbeitet von Günther Wiese, Peter Kreutz, Hartmut Oetker, Thomas Raab, Christoph Weber, Martin Franzen, Martin Gutzeit, Matthias Jacobs und Claudia Schubert), 12. Aufl. 2022

 

トビアス シーベ 氏

ドイツ法弁護士、外国法事務弁護士(German-qualified), ARQIS Foreign Law Office Tokyo

専門は労使関係、コンプライアンス、商取引、データプライバシー関連等。ドイツや日本、ニュージーランドでの実務経験もあり、現在は、東京にある法律事務所に勤務。欧州ビジネス協会(EBC)委員長を務めるほか、日欧のビジネスマンを対象としたセミナー講演を多数行っている。

【略歴】

  • 2000年~2005年 Law studies at Christian-Albrechts-University of Kiel (Germany)

  • 2006年~2007年 Postgraduate studies (Master of Laws) at Victoria University of Wellington (NZ)

  • 2005年~2010年 Ph.D. in Law (Dr.) at Christian-Albrechts-University of Kiel (Germany), Topic: Labor Law

  • 2011年~2013年 Lawyer at ARQIS Rechtsanwälte, Duesseldorf (Germany)

  • 2013年~ Lawyer at ARQIS Foreign Law Office, Tokyo (Japan)

【主要著書】

博士論文(Ph.D. Thesis):The succession of functions under works constitution law -
 with special consideration of the continued validity of works agreements, general
works agreements and group works agreements in terms of the restructuring of
work places and companies.

 

桑村 裕美子 氏
東北大学大学院法学研究科 教授

主な研究テーマは、労働組合法を中心とする集団的労働法。ドイツの労働法についても詳しい。2004年東京大学法学部卒業。2007年東北大学大学院法学研究科准教授。2021年より現職。

【最近の主要著書】

  • 『労働者保護法の基礎と構造―法規制の柔軟化を契機とした日独仏比較法研究』(有斐閣、2017年)
  • 「コロナ禍での事業所閉鎖と賃金補償のあり方~日独比較を基礎にして」労働問題リサーチセンター『激変する雇用環境と労働法・労働政策の課題』(2021年)22頁
  • 「ドイツ労働法における労働者性とクラウドワーカーの法的地位 -連邦労働裁判所2020年12月1日判決の意義と課題-」労働問題リサーチセンター『雇用・就業をめぐる諸政策の重層化と労働法の役割』(2022年)183頁

など多数。

 

【パネルディスカッション モデレータ】

荒木 尚志 氏
東京大学大学院法学政治学研究科 教授    

日本の労働法および比較労働法研究の第一人者であり、労働法や雇用に関する著書多数。2001年より現職。2017年より中央労働委員会公益委員・会長代理、厚生労働省労働政策審議会労働条件分科会会長。

【最近の主要著書】

  • 『労働法学の展望』(共編著、有斐閣、2013)

  • 『詳説労働契約法(第2版)』(共著、弘文堂、2014)

  • 『社会変化と法』(責任編集、岩波書店、2014)

  • 『ケースブック労働法(第4版)』(共編著、有斐閣、2015)

  • 『変貌する雇用・就労モデルと労働法の課題』(共編著、商事法務、2015)

  • 『解雇ルールと紛争解決―10カ国の国際比較』(共編著、労働政策研究・研修機構、2017)

  • 『講座労働法の再生 第1巻 労働法の基礎理論』(共編著、日本評論社、2017)

  • 『労働判例百選(第10版)』(共編、有斐閣、2022)

  • 『労働法(第5版)』(有斐閣、2022)

など多数。