『世界二大生産都市―シアールコートで製造する高品質手術器具』 ~パキスタンの医療用手術器具製造会社の社長に聞く
2018年1月19日(金)10:00
(Pakistan/パキスタン)
Wrangler Instruments Pvt. Ltd.
Mr. Muhammad Usman (Director/ Product Manager)
Pakistan
AOTSが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。
今回、パキスタンにおいて手術器具製造を行う会社の社長にお話をうかがいました。
巨大マーケット、少数競合者
隔たりのない敬意と配慮
学術界との連携、研修、アップグレード
-途上国ゆえの課題にはどのように取り組んでいますか?
まず一つ目に、我々がヨーロッパやアメリカなどの医療用機器市場で発展途上国として競合する上で問題となるのは、先進国に比べて人材育成に関する情報が不十分で、研修や経験も少ないということです。
パキスタン人は、一般的に勤勉家が多いです。集中力も高く新たな技術や手順を非常に効率よく習得します。しかしながら、先進国に比べると途上国の職場環境はより劣っています。例えば、私の国では職場には女性があまりいません。特定の仕事に就くためには必要な教育を受けていない人々もいます。一般的に、企業は粗悪な市場で競い合い、結果的には商品の値段を下げることで競合他社に勝とうとします。
途上国でビジネスを成功させるにあたり、主に課題となるのは人材です。我が社には優れた人事部長がおり、人材育成や研修を管理しています。例えば、最近レーザー加工機を3台購入したのですが、元は化学エッチングの業務を行っていた社員が研修を受けて、現在はレーザー加工機を扱っています。非常に効率よくこの機械を使いこなしています。このように、人材開発のために出来る限りの奨励も行われています。
人材関連の課題を解決するために、学術界と連携することでより優れた人材を探して確保し、また異なる様々な研修を社員に受けさせています。最近では、いくつかの大学と協働し研修会を実施しました。しかし、それでも尚、合弁事業または技術移転という手段を通じて、より優れた専門的指導を受ける必要があると強く思います。
二つ目は、私が今回AOTSのPQM(品質管理)研修プログラムに参加し、品質管理、日常業務管理や方針管理の改善法などを学んだ理由でもあるのですが、パキスタン国内のそれらの標準はかなり遅れているのです。プログラムに参加してみて、母国の産業の標準化が非常に遅いことを認識しました。我々は、産業のシステムや標準業務手順書(SOPs)などのアップグレードをする必要があります。これが現在の最大の課題です。
日本の製造技術、機械、資材は、小さい会社のものでさえ、パキスタンと比べるとはるかに高度です。ですから、日本のような国から技術的知識を継承出来れば、大きな好機になるはずです。
次のターゲットは日本
最近は、ベネルクス(ベルギー・オランダ・ルクセンブルク)との取引が順調に進んでいます。マーケットにおける新たなチャンスを逃さないためにも、販売会社とは非常に親密な関係を築いています。最近、アフリカで実施されたPEPFAR(米大統領エイズ救済緊急計画)というプログラムのために、当社で開発した医療キットをUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)に提供しました。
また、デンマークのユニセフにも3年契約のもと、当社の製品である消毒ドラムを直接提供しています。
現在ヨーロッパ以外の国へのビジネス展開も視野に入れており、我々は次に目指す市場としてアメリカと日本を有力としています。最近、日本の東京にある病院から連絡があり、我々の製品に興味があり新しく販売業を立ち上げたいとのことでしたので、当社からサンプルをお送りしたところです。