経営者インタビュー

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『世界二大生産都市―シアールコートで製造する高品質手術器具』 ~パキスタンの医療用手術器具製造会社の社長に聞く

2018年1月19日(金)10:00

  (Pakistan/パキスタン)

 

Wrangler Instruments Pvt. Ltd.
Mr. Muhammad Usman (Director/ Product Manager)
Pakistan

 

AOTSが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。

 

今回、パキスタンにおいて手術器具製造を行う会社の社長にお話をうかがいました。

巨大マーケット、少数競合者

Wrangler Instruments Pvt. Ltd.は、2007年に設立された、主に医療用手術器具を製造する会社です。124名の社員と共に、様々な手術現場で使用されるはさみ、鉗子、開創器、クリップ、ピンセット等、高品質な製品を製造しております。
 
私たちが製造する製品の99%は、主にドイツ、オランダ、ベルギーに輸出しています。OBL(Own Brand Labeling)認証を受けた会社が、彼らのブランド名で当社の製品を販売しています。我が社の自社ブランド製品もありますが、パキスタン国内のみで販売をしており、数も多くありません。当社の製品は主にドイツやヨーロッパ諸国をターゲットに販売されております。
 
手術器具産業の歴史は、100年になります。製造工程の60%は、手作業で行っております。パキスタンには、約450社の競合他社が存在するのですが、マーケットは同じで、主にドイツ、アメリカ、イギリス、日本です。
 
当業界で有利な点は、手術器具製造を手がける国は世界中に主に2カ国しかないということです。パキスタンとドイツです。2カ国といっても実際には、ドイツのトゥットリンゲンと私の出身地であるパキスタンのシアールコートの2都市のみなのです。トゥットリンゲンにてもともと開発された技術がシアールコートにも継承されました。ですから、私たちにとって最大の利点は、中国、日本、アメリカなどの強力な競合者がいないということです。ご存知の通り、手術道具というものはどこの病院にとってもライフラインとなるものですし、世界中に使用しない国はありません。マーケットが巨大であるにも関わらず、製造に携わる国は多くはないのです。

隔たりのない敬意と配慮

-御社の経営方針についてお聞かせください。
 
当社の方針では、全ての管理者は主要な核となり、全ての社員は基本構成をする要員であるということを信念としています。よって、管理者は、トップ経営陣により作成された方針や戦略を実行するための架け橋となり、また社員からの声には隔たりのない敬意と配慮をもって対応しています。

学術界との連携、研修、アップグレード

-途上国ゆえの課題にはどのように取り組んでいますか?

 

まず一つ目に、我々がヨーロッパやアメリカなどの医療用機器市場で発展途上国として競合する上で問題となるのは、先進国に比べて人材育成に関する情報が不十分で、研修や経験も少ないということです。 

 

パキスタン人は、一般的に勤勉家が多いです。集中力も高く新たな技術や手順を非常に効率よく習得します。しかしながら、先進国に比べると途上国の職場環境はより劣っています。例えば、私の国では職場には女性があまりいません。特定の仕事に就くためには必要な教育を受けていない人々もいます。一般的に、企業は粗悪な市場で競い合い、結果的には商品の値段を下げることで競合他社に勝とうとします。

 

途上国でビジネスを成功させるにあたり、主に課題となるのは人材です。我が社には優れた人事部長がおり、人材育成や研修を管理しています。例えば、最近レーザー加工機を3台購入したのですが、元は化学エッチングの業務を行っていた社員が研修を受けて、現在はレーザー加工機を扱っています。非常に効率よくこの機械を使いこなしています。このように、人材開発のために出来る限りの奨励も行われています。

 

人材関連の課題を解決するために、学術界と連携することでより優れた人材を探して確保し、また異なる様々な研修を社員に受けさせています。最近では、いくつかの大学と協働し研修会を実施しました。しかし、それでも尚、合弁事業または技術移転という手段を通じて、より優れた専門的指導を受ける必要があると強く思います。

 

二つ目は、私が今回AOTSのPQM(品質管理)研修プログラムに参加し、品質管理、日常業務管理や方針管理の改善法などを学んだ理由でもあるのですが、パキスタン国内のそれらの標準はかなり遅れているのです。プログラムに参加してみて、母国の産業の標準化が非常に遅いことを認識しました。我々は、産業のシステムや標準業務手順書(SOPs)などのアップグレードをする必要があります。これが現在の最大の課題です。

 

日本の製造技術、機械、資材は、小さい会社のものでさえ、パキスタンと比べるとはるかに高度です。ですから、日本のような国から技術的知識を継承出来れば、大きな好機になるはずです。

次のターゲットは日本

-海外取引についての展望は?
 

最近は、ベネルクス(ベルギー・オランダ・ルクセンブルク)との取引が順調に進んでいます。マーケットにおける新たなチャンスを逃さないためにも、販売会社とは非常に親密な関係を築いています。最近、アフリカで実施されたPEPFAR(米大統領エイズ救済緊急計画)というプログラムのために、当社で開発した医療キットをUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)に提供しました。

 

また、デンマークのユニセフにも3年契約のもと、当社の製品である消毒ドラムを直接提供しています。

 

現在ヨーロッパ以外の国へのビジネス展開も視野に入れており、我々は次に目指す市場としてアメリカと日本を有力としています。最近、日本の東京にある病院から連絡があり、我々の製品に興味があり新しく販売業を立ち上げたいとのことでしたので、当社からサンプルをお送りしたところです。

価格より質を優先

海外ビジネスを成功に導くには、販売業としての業務をこなすだけではなく、取引先の戦略的パートナーになることが重要だと思います。また、既存の商品のみを販売するのではなく、革新的な製品の開発の援助を行い製造業者や顧客のために可能性をより広げなければなりません。
 
顧客からのフィードバックもまた非常に重要であると思います。
 
当社は、パキスタン国内ではほとんど販売を行っておりません。ヨーロッパとのビジネスで分かった事は、再利用器具よりも使い捨て器具の需要が高く、価格よりも品質が優先されるということです。例えば、ヨーロッパでは持針器の相場が2ドルくらいですが、パキスタンでは50セントなのです。当社は、製品の質に関して妥協はしませんし、質を落とすこともしませんので、よって現時点で我々が視野に入れる取引先は先進国のみなのです。

サンプルを送付しますので連絡をください

日本の最初の印象は、謙遜さと礼儀正しさでした。それは、日本の会社に対しても感じたことです。
 
四または五世代目の会社を訪問したのですが、日本の会社の寿命の長さには衝撃を受けました。そのように長期間、会社を維持できるのは日本人の協力体制によるものであると思います。協調性を保ち共に助け合いながら生活をするという習慣を身につけてきたためであると思います。そのような文化が日本の企業に真の利益を与えているのです。
 
当社の製品に興味を持たれた日本の企業がありましたら、是非連絡をください。サンプルをお送りします。お問い合わせをお待ちしております!
 
ありがとうございました。