『将来的にはバルカン地域を超えて世界に事業を拡大したい』 ~マケドニアのスポーツ用品販売会社社長に聞く (2/2)
2017年9月29日(金)10:00
(Macedonia/マケドニア)
※本記事は2回に分けて掲載します。
本記事は第2話の掲載分です。
<第1話はこちら>
Sport Vision Dooel Skopje
Mr. Igor Trpkovski (General Manager)
Macedonia
AOTSが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。
今回、バルカン地域においてスポーツ用品を製造販売する企業の社長にお話しをうかがいました。
-現在の海外ビジネス展開状況を教えてください。
-今後、更なる海外ビジネス展開をお考えですか?また海外ビジネス展開を成功に導くために、貴社が大切にしている事、重視したい事は何でしょうか?
-貴社ビジネスが属する、自国におけるマーケットの状況について教えてください。
国内に競合他社はありますが、当社は比較的大規模でそれらの企業より大きなマーケットシェアを有しているため、競合他社を深刻な脅威とはとらえていません。こうした競合他社は15年以上の歴史を持ち多くの店舗を国内で展開しているという点において、我々と競合しています。しかし、よりよい企業をめざすという我々のモチベーション維持につながるため、競争はビジネスにとって健全なものと考えています。
-日本を含め、他国と自国における商慣習には違いがあると思います。自国での働き方に関する考え方、業務文化、国民性など、他国との際立った違いがあればご紹介ください。
今回の来日において、日本ではビジネス上の関係が信頼や誠実さに基づいて成り立っていると学びました。しかし、私の母国マケドニアやその他のヨーロッパ諸国においては、ビジネスは契約とその条項に基礎をおいているため、信頼には頼らないほうが無難です。ヨーロッパにおいては法的な保護や罰則を定めた厳格な契約を結ばなくてはなりませんが、ビジネス環境は安定していないため、そうした契約の締結には慎重になる必要があります。個人的には、ビジネスを何に基づいて行うかについてのこの相違は、私の国と日本の間の最も大きな違いだと考えています。とはいっても、信頼に基づく人と人とのつながりによるマネジメントが私の国で通用することもあります。例えば、当社はつねに我々のビジネスを重んじてくれる取引先銀行との関係があります。かなりの額の資金が必要となった場合でも、この銀行の担当者と5分間のコーヒーブレイクの最中に内々に資金の貸し借りについて合意し、その後その合意を公的にして透明性を確保する、ということが時々あります。お互いにお互いをよく知っているという相互の信頼があるからこそ、こうしたやり方が通用するのです。いつもビジネスがこのように信頼に基づいて行われればよいと思いますが、単純にこうしたケースはあまり多くはありません。私の個人的な意見としては、ビジネス社会において、我々はとても重要な伝統的価値である高潔さや誠実さを高めるため、より努力すべきであると思います。
-自社人材を育成していく上で、どのような点に注意を払って取り組んでいますか?
企業の事業拡大は、まったく新しい需要を理解し、それに適切に対処し、適応していくということです。組織的な成長により、企業は新たなインフラと、より洗練された経営陣を必要とする複雑なものになっていきます。現段階では、当社は限られた地域で活動する地域的な小売企業であり、すべての重要な経営判断は本部で中央集権的に行われています。真の国際企業への移行を遂げるために、当社は、経営を脱集権化し、重要なビジネス上の機能をそれぞれの国で展開するための組織変革を必要としています。つまり、決定が各国子会社のレベルで行われ、問題が問題に最も近いレベルの従業員たちによって解決され、各部門が本当にローカルなレベルで運営されるという状態をめざす変革です。研究者の中には、本部にお伺いをたてることなく経営判断を下すための本当の権限を与えられない限り、地に足のついた地域マネージャーの存在だけでは不十分だと警告する方もいます。最大の効果をあげるためには、地域マネージャーはもちろん経営判断を下し問題を解決するための権限を与えられなくてはなりませんが、同時に、企業全体のレベルで資源を共有し、協働をはかり、共通の技術的プラットフォームを利用する必要もあります。変革を実現するための最初のステップは、国際的な視野を持ち国際的なビジネスを運営できるマネージャーを育てるため、本部機能を強化することです。さらに、それぞれの役割や規範が明確な組織構造によって、我々は新しい環境に拡大していく際の「弱点」を克服していくことができるでしょう。したがって、新たな環境での新たな一歩をサポートするだけの柔軟性を現在の組織構造が備えているかを経営陣が検討するための時間は、とても価値のあるものと思います。
成長はその自然ななりゆきとして、予測の可能不可能にかかわらず、しばしば早いペースで新しい相互作用と新たな過程を生み出します。それらに適切に対処していくために、経営陣は「両利きのように器用な」能力を持たなければなりません。つまり、彼らの職務の範囲を超えてイニシアティブをとり、企業全体を通じた協力を実現して横のつながりをつくり、多くのやるべきことを同時に達成していく能力が必要とされています。したがって、企業の変革は高い経営レベルから、戦略的ゴール、スタッフ、資源の入手可能性や新しい管理手続き等を考慮して開始されなくてはならないと思います。
ご協力ありがとうございました。
※本記事は2回に分けて掲載します。
本記事は第2話の掲載分です。
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