経営者インタビュー

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『成長するペルーIT市場で中小企業向けERPシステムを展開』 ~ITシステムコンサルティング企業社長に聞く

2017年11月2日(木)10:00

(Peru/ペルー)

 

Ventura Soluciones S.A.C
Mr. Jorge Antonio Villa Rojas (Founder and CEO)
Peru

 

AOTSが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。

 

今回は、ペルーで現地中小企業向けITシステムコンサルティング企業を経営するJorge Antonio Villa Rojas氏にお話をうかがいました。

 

*ERP: Enterprise Resource Planningの略

 
御社ではどのようなITシステムサービスを提供されているのですか?
 
弊社Ventura Soluciones(Ventura Solutions)は、ドイツのSAP社が中小企業向けに開発したERPソフト「SAPビジネスワン」の、導入支援・アフターフォロー等のコンサルティングサービスを提供しています。具体的には、現場のニーズやビジネスプロセスの分析、システムの導入・運用サポートなどを行っています。また、システムの変更に伴う組織改革の支援も行っており、お客様には、製品導入によるメリットを最大限活用していただけるようサポートをしています。現在弊社は、ペルーとボリビアの二カ国でビジネスを展開しています。
 
現在のペルーにおける、ERPビジネス市場の動向を教えてください。
 
人口約2800万人のペルーは、過去15年の間に目覚しい経済発展を遂げ、ブラジル、アメリカ、中国などから多くの外国投資を呼び込んでいます。好調な経済成長、政府による継続的な産業支援、当業界の流行もまた我が国のIT産業の成長を助長しています。一方で、ペルーのIT市場は、関連企業へのシステムソリューションの普及率も低く、未成熟です。今後より多くの企業がITの活用を進めていくことで、ペルーのIT市場はますます成長していくでしょうし、海外投資も増加するのではないかと思います。
 
なお、IT市場の平均成長率は年間約17%で、公共及び民間投資総額は、コロンビア、メキシコ、アルゼンチン、チリなどの周辺諸国の中で一番大きい規模となっています。またペルー国内のソフトウェア産業については、著作権侵害率が67%と高く、また違法コピーが横行しているにも関わらず、2016年に1億8000万ドルの売上を達成しました。また今日までに約7000人の雇用を創出し、現在300社以上の企業が存在する中、約85%は中小企業です。  
 

ペルーのERP市場は今後競争が激しくなっていくようですね。その中で、現在御社が直面している課題は何ですか?

 

現在は大きく3つの課題があります。

一つ目は、競合他社と比べ、弊社の優位性をいかに明確に打ち出せるかという点です。ペルーでは、我々を含め全部で7社が同じ製品を提供しています。そのため、弊社独自の付加価値をつけて、他社との差別化を図らなければなりません。
二つ目は、我々の市場戦略はまだ不十分であり、より効果的なものにしなければなりません。この分野におけるマーケティング専門家は殆どおらず、正解もありませんので、試行錯誤しながら努力しています。
三つ目は、イノベーション戦略の立案です。現在のビジネスをより発展させるために、最先端の技術やイノベーションを学び、取り入れていかなければなりません。日々の業務に追われながらも、どれだけ研究開発に時間を費やしていけるかが課題です。

 

それらの課題を御社ではどのように解決されていくのでしょうか?

 

専門性の向上:一つ目の課題に対しては、ある特定産業に特化した戦略を立てることで、我々の競争力を上げることができると考えています。すでに陸上交通、小売、製造業などいくつかの産業で10年以上の経験を積み重ねていますので、これら産業を中心に専門性を高めていきたいと思っています。課題は、ニッチでありながら、かつ我々のビジネスを維持成長させるに十分なサイズの産業をいかに見極めていくかです。

 

マーケティングノウハウの獲得:二つ目の課題については、成功している同業他社をベンチマークし、経営やマーケティングを参考にしています。特に、ペルーと市場の大きさや特長が類似している他の南米諸国に注目し、そこで成功している企業へ実際に訪問し、彼らから学んだことを自社の経営に取り入れています。

 

イノベーション戦略:最後の課題については、弊社経営陣で特にイノベーション戦略立案のための時間を特別につくり、産業動向の評価や短期計画の作成などを始めました。新領域にチャレンジしなければ、ビジネスの成長はありません。新たなイノベーションを積極的に取り入れ、長期的な視野で、我が社の新たなビジネス領域を開拓していきたいです。

 

現在御社では、ペルーとボリビアでビジネスを展開されているそうですが、今後さらに他の国々へ拡大していく予定はありますか?

 

現状では、ペルーとボリビアの二カ国に集中しており、他の国へ進出する予定はありません。各国にすでにSAPサービスを提供する現地企業がありますので、我々は弊社が強みを持つ地域に絞ってビジネスを行っています。ボリビアに進出した時は、弊社は当時2社目のSAPエージェントでしたが、すでに存在していたエージェントよりも高品質なサービスを提供することができたため、順調にビジネスを展開することができました。

 
御社の経営理念で特に重要視している点はありますか?
 
この質問については、私が日々チームに言い聞かせている基本理念をお伝えしたいと思います。
  1. 顧客第一:常に顧客の立場に立つべし。お客様の声をそのまま受け止めず、彼らが本当に欲しているものや何に頭を悩ませているのかを感じとりなさい。
  2. チームワーク:チームでお互いに協力することが成功の鍵である。
  3. 品質:お客様の満足、信頼を得て今後も取引を継続してもらうためには、お客様の持つ期待値を超えなければならない。
  4. コミュニケーション:明確で正確なコミュニケーションを心がけ、間違いや誤解を避けなければならない。自分自身がしてもらいたいような方法で、相手にもメールやコミュニケーションを行うべきである。
  5. 謙虚さ:他者から学び、成功も失敗も学びの機会として受け止めよ。「勝つときもあれば、学ぶときもある」 
 
御社での人材管理はどのようにされていますか?
 
今やペルーは労働人口の約70%が30歳以下の若年層です。かつてほど会社への忠誠心が期待できない時代になっていると、我々は認識すべきです。ミレニアム世代は頻繁に転職を繰り返し、常に次のベストを探しているといわれています。IT企業も例外ではなく、むしろ各種産業の中でも最大の離職率となっています。
 
こうした環境ではありますが、弊社では優秀な人材に長く働いてもらえるために、主に二つの取り組みを行っています。
一つ目は、柔軟な働き方を認める取り組みです。フレックスタイム制や、オフィス以外での勤務を可能にし、社員が自由に行動出来るようにしています。現在社内では、ビジネスプロセスの再構築を行っているところです。
二つ目は、社員教育の充実です。社内研修を提供するだけではなく、外部の研修プログラム等への参加も奨励・支援しています。
Jorgeさんは、これまで日本でのAOTSマネジメント研修コースへ2回参加され、いくつかの日本企業の経営手法を学ばれました。日本とペルーの商習慣において、類似点や相違点はどのようなところでしょうか?
 
両国の商習慣については、私は類似点が多いと感じています。
 
ペルー人の文化は、一般的に集団主義的といえます。ペルー人の間では、他者と長い信頼関係を築くことが何よりも重要とされており、また、何か取引をする場合は、その前に強い絆を結ぶことが非常に大事です。例えば、ペルーの人々は、一般的に自分の知人や信頼している人とのみ商売をしたがります。言い換えれば、ペルーでのビジネス関係は人と人の間に構築され、必ずしも企業間で構築されるものとは限らないのです。ビジネスパートナーからあなたが信頼を得たとしても、そのパートナーが必ずしもあなたの同僚を同じように信頼しているわけではありません。そのため、営業などの会社の「顔」は、頻繁に変えるべきではありません。また、もしペルーへ進出したい日本企業がいらっしゃったら、まずは良い現地パートナーを見つけ、彼らからの紹介を得ることをお勧めします。
 
打合せでは、ペルーでは商談前にまずは天気やニュース、家族などの話題について話すことが多いです。ペルーに商談でお越しの際は、いきなりビジネスの話を始めるのではなく、そうしたカジュアルな話題から始め和やかな空気をつくることが大事です。
 
コミュニケーションスタイルについては、3つ特徴が挙げられます。
一つ目は、多くのペルー人の話し方はソフトであるということです。もちろん時には声を上げて話す時もありますが、多くの場合、大声で話したり荒々しい態度をとったりすることを嫌います。二つ目は、人と話すときの距離が近いことです。恐らく、60センチメートルかそれ以下の距離で会話をする人が多いでしょう。日本人の方には近すぎるかもしれませんが、後ずさりしてはいけません。後ずさりすると、一緒にいることが不快であると相手に誤解を与えてしまうかもしれません。三つ目の特徴として、ペルー人のコミュニケーションは間接的であるといえます。ペルー人は言いたいことをあまり直接的に言わないので、行間に隠れた意味を理解しなければいけません。その人が本当に伝えたいことよりも、相手が聞きたいだろうことを想像して話す傾向があります。一方で、沈黙は恥ずかしさや、あるいは否定的な意味を持ちます。もし日本の方がペルー人とコミュニケーションをとるときには、我々と同じように間接的な方法でコミュニケーションをとるのがよいと思います。直接的すぎると、押しが強く失礼な印象を与えかねません。一度、良好な人間関係が築ければ、率直な会話ができるようになるでしょう。
 
最後に、日本や日本企業に対する印象を教えてください。
 
ペルーでのビジネスと比較し、研修プログラムを通じて日本企業に見られるいくつかの特徴に気付くことができました。
一つ目は、多くの人が人生において、仕事に重きを置いていること。人生の中心に仕事があるように見受けられ、またそれを裏付けるような様々な日々の習慣が日本にはあります。
二つ目は、企業も社員も、ひとつの会社に一生勤めることを期待していること。
三つ目は、日本人はチームワークに優れていること。逆を言えば、スター社員は必要なく、個人よりも組織全体の最適が求められているように思います。
四つ目は、オフィスを清潔に保つのは、社員全員の役割であること。ペルーでは、オフィスの清掃は他の誰かの仕事という認識の人が多いです。
 
以上いろいろ言及させていただきましたが、日本人の皆さんは、本当に丁寧で、しっかりとしていて、かつ非常に親切な方々ばかりです!近い将来、また何度でも日本に戻ってきたいと思っています。  
 
どうもありがとうございました。