経営者インタビュー

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『いつか国際市場に参入し、グローバル企業と取引したい』 ~インドネシアの自動車用部品OEMメーカー社長に聞く

2017年3月22日(水)10:27

(Indonesia/インドネシア)

 

CV Regina Eka Pratiwi
Mr. Alfian Nur Ubay Ubaydilah (Director)
Indonesia

 

HIDAが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。

 

今回、インドネシアで自動車用ゴム製スペアパーツ製品等取り扱うOEM企業を営む参加者にお話しをうかがいました。

 

 

-まず初めに、御社の会社概要についてご紹介ください。

 
CV Regina Eka Pratiwi(REP)は、ジャカルタの北方約50kmに位置するスカブミに拠点をおく受託製造会社(OEM)です。2013年の創業以来、安価な生産コストで大手企業に製品やソリューションを提供しています。
 
昨今、インドネシア人労働者の標準的な月額報酬に対する要求が高くなっています。当社は銀行の支援を受けており、また自社で生産拠点を設けているため、自社の方法を活用して、インドネシア国内にある数社の企業を支援することが可能です。もちろん、当社の経営者や従業員の力で支援を行うこともできると思います。
 
2013年以来、当社はアストラ・オートパーツ・グループの一員であるPT. Indokarlo Perkasa(IKP)に協力しています。IKPは成形ゴムの製造を行い、自動車のスペアパーツを生産しています。過去3年間、当社はIKP向けに、ラバーステップ、チェーンスライダー、グロメット、ダンパー、ラバーブッシュ、その他のゴム製品等、自動車用ゴム製スペアパーツ製品等を生産し供給しています。
 
2015年には、インドネシア国内で同じくダイカストを専門とするPT. Sempana Jaya Agung(SJA)と取引を開始しました。今日、IKPとSJAの両社と良好な取引関係を築いており、さらに将来性があると考えられる他の数社と、OEM取引において協力関係を広げていきたいと考えています。現在、SJAに供給している当社の製品は、ハンドルレバーSTR H、Cap 30 mm、ハンドル下に設置するホルダーなど、金型成形から仕上げまでのプロセスを当社で行っている製品です。
 
両社に対して可能な月当たりの生産数は、約110名の従業員を総動員しておよそ200万個です。従業員の内、100名が製造作業員で、10名がスタッフとマネージャーです。現在、当社の製造エリアは面積2ha(2万平方メートル)、そのうちIKPおよびSJA両社の製品を対象とした製造エリアの敷地はわずか3,000平方メートルです。つまり、17,000平方メートルもの土地が利用可能な状態です。
 
-会社を経営していく上で、どのような事を特に大切にされていますか。理念や方針など、大切にしていることを教えて下さい。
 
新たに立ち上げられた企業であり、かつ発展を続けている当社において、私が作り上げ、当社の全ステークホルダーに伝えたい本質的価値観は以下の通りです。
 
改善の精神
業務の生産性
イノベーション
顧客への敬意
誠実さ
チームワーク

-自社事業を更に発展・成長して行く上で、成長の妨げとなっている課題はありますか?またその“課題”に対し、どのような手を打つべきとお考えですか?

 

[課題]
当社が直面しているビジネス上の課題は価格競争です。当社が製造している製品を低価格で提供しつつ、高い品質の製品の提供を可能にする資源や支援を維持する必要があります。
 
当社が直面しているもう一つの課題は、急速な技術進歩、経営術の変化、そしてモニタリングシステムの刷新です。当社は他社の一歩先を行き、顧客へ最高のサービスを提供できるよう、進歩していかなければなりません。
 
政治問題やグローバル経済の動きも課題です。国内の顧客であろうと、国外の顧客であろうと、可能な限り経済状態、または政治問題が顧客に大きな影響を与えないようにしていく必要があります。
 
[課題に対する対応策]
効率良く使用できる資源や主要な材料を得ることと同様に、幅広い人脈を持つ強力なチームを持つことは価格競争を制する第一歩となります。さらに、社内外で直面する諸問題を解決するため、私は常にインドネシアの他企業と連絡を取り、最善の策を得ています。会合では問題について話し合い、共に解決することができると考えており、個人起業家たちの見解を知ることができます。私はいくつかの経営者団体に所属し、現在のインドネシアの経営の実情に関する情報交換を行っています。
 
2番目の課題を乗り越えるための解決策の一つは、国内外のビジネス団体と連絡を取り合うことです。さらに、メディアの情報を入手することで、いくつかの分野における技術開発や技術提供について決定を行います。また、ヤヤサン・ダルマ・バクティ・アストラ(YDBA)のような、当社向けに従業員教育を提供してくれる団体や公共機関との提携が役立っています。
 
3番目の問題に関しては、国内外で現在起きている政治問題、並びに経済動向に関する情報を得ることが必要です。当社のビジネスに直接的、または間接的に影響を及ぼしうる情報がないか調査しなければなりません。
 

-現在の海外ビジネス展開状況を教えてください。

 

現在、当社はOEM取引企業として、インドネシア市場に的を絞っています。重要なのは私が適切に事業を経営し、他社に魅力的な価格を提示することです。もちろん、品質の良い製品と共に、顧客を満足させるサービスを提供し続けます。

 

生産工程の低価格化への協力を要請している製造会社にとって、当社の事業は間違いなく解決策となるでしょう。そのため、機会があれば、いつか国際市場に参入し、グローバル企業と取引したいと思います。

 

-今後、更なる海外ビジネス展開をお考えですか?また海外ビジネス展開を成功に導くために、貴社が大切にしている事、重視したい事は何でしょうか?

 

現在のところ、インドネシア国外の数社の企業と連携することで、インドネシア市場でさらに多くのビジネス関係の構築を計画しています。インドネシアで製造業を築くための協力を模索することから始め、一部の企業が当社のサービスを受ける機会を広げています。それらの企業が生産に必要な土地を持っていない場合、製造機の移管や生産機械の設置を引き受けています。そうすることで、当社において、生産エリアや現地労働者、社内管理など、生産のサポートを行います。当社のこうしたサポートサービスを受ける企業の提供する資源や労働力で生産をほぼ賄えるので、当社が製品に乗せる生産サポートのための費用負担はそれほど高くありません。

 

最も重要な点は海外企業と取引関係を築くことです。そうすれば、安価な生産工程、良質な製品、定時の配達、取引やパートナーシップの向上を目的とした定期的なコミュニケーションなどを保証することで、顧客を満足させることができます。

 

当社はOEM取引企業なので、日本企業にとって有益な協力パートナーとなり得ます。もっと日本企業と協力関係を築きたいと考えています。

 

-貴社ビジネスが属する、自国におけるマーケットの状況について教えてください。

 

現在の市況はとても安定しており、問題はないと見ています。低価格の部品を顧客に供給するという当社の強みを活かして、すべての顧客にも我々に協力してほしいと強く思っています。また、当社は質の良い製品やタイムリーな配達など、優良なサービスを提供しています。製造サービスは価格を低く抑えたい大手企業の信頼を得られるパートナーシップです。しかしながら、今まで他の国内企業と共に機会を広げようとしていませんでした。これでは低価格で生産を行えるパートナーを必要とし、協力したいと考えている日本企業と当社との連携の機会を広げる助けになりません。

 
-自社人材を育成していく上で、どのような点に注意を払って取り組んでいますか?
 
1. 従業員教育:
人材育成の7つの柱(組織開発、採用管理、人的管理、業績管理、賞罰管理、労使関係、および企業文化管理、退職管理)のうち、当社が直面している第一の課題は従業員の教育です。会社の目標に沿って従業員を成長させるのは、事業を管理し、成長させることよりも、はるかに難しいものです。この場合の難しさは、各人の能力差に起因しています。さらに、私は従業員の日々の生活にも目配りし、あらゆる問題、特に個人的な問題を解決し、職場環境を良くしたいと思っています。このようにして、私は従業員の士気や可能性を高めています。
 
2. 賞罰管理:
従業員の士気を高めるには、従業員が行うどの仕事に関しても必ず賞罰を行う必要があるとよく言われていますが、会社が従業員の実績から実際の仕事の量や士気を持ち続けているかどうかを見出すのは難しい作業です。当社で賞罰制度を実行して、現時点で10か月になります。開始当初は従業員それぞれが賞罰制度の存在を意識していましたが、目標を達成しない従業員数名が招いた悪影響により、ここ2か月はその存在を忘れつつあります。2か月間で、報酬を受ける従業員の総数はどんどん減少し、一部のマネージャーやこの制度を設計した私自身も賞罰制度に疑問を抱き始めています。
 
3. 採用管理:
最も難しいのは人材育成の7つの柱の3番目、人的管理です。当社には採用過程の作業手順書(SOP)が無いため、働きたい人なら誰でも当社で働けます。採用者が働き始めるまで、決してその能力を知ることができません。私と従業員候補者の相性が合わなければ、研修からの本採用はしません。
 
4. 給与の標準定義:
この点において、私は階級ごとに給与を標準化しましたが、その体系が正しいか、見直しが必要か不明です。というのも、標準給与を決定する上でベンチマークとすべき会社が見つかっていないため、比較を行うことができないからです。
 
-最後に、日本や日本企業についてどのような印象をお持ちでしょうか。日本に来て驚いた事、感動したこと等ありましたら教えてください。

 

私見ですが、日本企業と長年続いている改善の文化を切り離して考えることはできません。十分に発展した文化の中では、高まる顧客のニーズに応えることで、企業は成長を可能にしています。

 

さらに、日本企業はとても革新的に製品を開発すると同時に、それをビジネスに応用し、管理していると思います。この点はトヨタ博物館を訪れた時に見ることができ、豊田喜一郎や豊田佐吉が歩んで来た道程に感動しました。二人の段階を踏んだ製造機の開発が製品の品質を高めたということは、後世にわたって、日本の技術開発の好例として扱われるに相応しいと思います。

 

また、日本政府が日本の実業家と協力しているという事実を評価します。それによって、日本の起業家は成長し、利益を生み続けています。政府は起業家と顧客との仲介役を担い、事業を開始したばかりの起業家を教育し、融資をまとめる役も担っています。HIDAのコースにおけるある訪問先で、それを体験しました。

 

日本は優良な管理体制の構築に成功し、先端技術を開発し、人々の規律ある生活様式を築いた先進国です。

ご協力ありがとうございました。