経営者インタビュー

English

『長期的にはシンガポールやベトナムに配送センターを設置したい』 ~インドネシアの四輪・二輪車両および電子機器向けカスタム製品等製造企業社長に聞く

2017年2月16日(木)11:00

(Indonesia/インドネシア)

 

PT. Futari Mecca Utama
Mr. Henry Sontaduga Fitri (Director)
Indonesia

 

HIDAが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。

 

今回、インドネシアで四輪・二輪車両および電子機器向けの専門性の高いカスタム製品等製造を手がける企業を営む参加者にお話しをうかがいました。

 

 

-まず初めに、御社の会社概要についてご紹介ください。

 
PT. Futari Mecca Utamaは、ジャカルタの東側約20kmに位置するブカシにあり、2007年に設立されました。シール、スポンジゴム等、四輪・二輪車両および電子機器向けの専門性の高いカスタム製品およびカスタム部品の開発や、技術的問題の解決、生産効率の向上、そして高い品質性能の維持に従事することにより、好業績を収めています。
 
大手自動車企業、日本またはその他の国のOEM (相手先商標製品製造業者)、電子関連および一般産業企業との協力などが、当社の基本的な検討事項です。
 
当社は、3M 、テサ、積水化学工業株式会社、キンバリークラークの製品を扱う公認のOEM 、販売業社、加工業者であり、総勢53名の従業員が加工、切断、型抜き、サイズ変更、梱包の過程に携わっています。
 
当社にとって主要エンドユーザーとなる顧客は、ホンダ(四輪車両および二輪車両)、ヤマハ、ダイハツ、サムスン、パナソニック、LG等です。
 
-会社を経営していく上で、どのような事を特に大切にされていますか。理念や方針など、大切にしていることを教えて下さい。
 
競争力の維持および会社の成長に向け、我々は以下の事項について戦略を実行する必要があります。
  • 顧客満足度
  • クライアントとの関係
  • 費用対効果
  • 品質保証
  • 適時納品
  • 信頼性

-自社事業を更に発展・成長して行く上で、成長の妨げとなっている課題はありますか?またその“課題”に対し、どのような手を打つべきとお考えですか?

 

我々の課題の一つは、売上の拡大です。当社の売上は昨年比で減少しており、会社が成長するためには、新たな戦略または新しい市場を模索する必要があります。このように、我々は現在、大変厳しい状況にあります。しかし、こうした事態を数多く経験している我々は、互いに問題を議論し、ソリューションおよび打開策を見いだすことができると私は考えています。
 
問題を解決するための対策は、以下のとおりです。
 
販売・マーケティング技術の向上
販売・マーケティングに関する研修/会議への参加
販売戦略の評価と新戦略の模索
顧客満足の実現に向けた、品質、納入、サービスの水準向上
販売および/またはマーケティング人員の新規雇用
 

-現在の海外ビジネス展開状況を教えてください。

 

世界市場における当社事業の現状は、自動車産業が置かれている世界的な状況と変わりません。車に対する需要の大幅な低下により、生産台数が減少しています。これにより、生産部品に必要な材料の需要が減少し、その結果、自動車本体を製造するための材料を供給する当社に影響が及んでいます。

 

現在のところ、我々はインドネシア市場にのみ注力していますが、一部の材料については日本から間接的に輸入しています。

 

-今後、更なる海外ビジネス展開をお考えですか?また海外ビジネス展開を成功に導くために、貴社が大切にしている事、重視したい事は何でしょうか?

 

当社は、今後5年間は海外進出を予定していませんが、長期的にはシンガポールやベトナムに配送センターを設置したいと考えています。強力な技術支援、技術移転、そして価格設定、マーケティングおよび提携戦略に関する知識を、日本企業から得られればと思います。

 
-貴社ビジネスが属する、自国におけるマーケットの状況について教えてください。

 

インドネシアの現状は、昨年以来の市場の減速および大幅縮小という世界的な状況に極めて類似しています。特に自動車産業においては、今年の生産量に関して20~25%程度の減少が見込まれています。インドネシア経済において自動車セクターは非常に重要であるため、困難な状況にあります。

 

現在、どの企業も品質を最低基準で維持し、価格を下げるという同じ戦略を掲げているため、昨年よりも競争が激化しています。その結果、企業を発展させるだけの余裕が十分に確保できていません。

 

人口が多く、国民が大量の製品を消費することから、現在、多くの外国人、外国企業がインドネシアへ進出しています。当社は、インドネシアの自動車用接着剤セグメントで5~10%の市場シェアを有していますが、この市場に参入している企業は40~50社程あります。この中に主要大手5社が存在し、当社は6番手から10番手の辺りに位置しています。

 

-日本を含め、他国と自国における商慣習には違いがあると思います。自国での働き方に関する考え方、業務文化、国民性など、他国との際立った違いがあればご紹介ください。

 

インドネシアのビジネス文化および国民性については、以下のように思います。


“Gotong Royong”は、インドネシア語で同じ場所、同じ時間で「共に働く」ことを意味します。共に働くことを通じて、問題が減少したり、小さくなったりすることがあります。しかし、この「共に働く」文化には良い点と悪い点があります。

 

“予定通りの時間に”ということは、絶対的なものではありません。それゆえ、我々はいつでも何でも予定を変更することが可能です。

 

マーケティング活動の後は、昼食や夕食を共にするなど、顧客を接待するのが一般的です。

 

-自社人材を育成していく上で、どのような点に注意を払って取り組んでいますか?

 

インドネシアでは転職が当たり前の習慣となっており、人的資源開発が課題の一つとなっています。人々は通常、より高い給与、より充実した手当等を普段から求めており、良い会社があればそちらへ移ります。外国企業よりも国内企業の方がこうした困難な状況に直面しています。

 

我々は当社を家庭的な会社にしようと試みており、サイクリング、キャンプ、釣り等の野外行事を数多く実施することで、従業員全員との強力な関係を構築しました。また、当社にはECnDP(従業員の貢献および能力開発プログラム)システムがあり、従業員が良い仕事をしたとき、または目標をすべて達成したときに会社が報奨を与えます。報奨は仕事と関連があるもの、例えば、研修プログラムや団体への参加、インドネシア国内外で開催される展示会の訪問などが対象です。

 

-最後に、日本や日本企業についてどのような印象をお持ちでしょうか。日本に来て驚いた事、感動したこと等ありましたら教えてください。

 

私は、訪日するたびに日本に感銘を受けています。私が日本人に抱くイメージは、高い労働倫理、規律正しさ、時間に対する意識や忠誠心の高さです。これらの点について私は、駅や電車の中、オフィスでつぶさに見ることができました。

 

日本でいくつかの企業を訪問した後、私は、企業が自らのビジョン、使命、理念を守り、発展させることに非常に長けていることを理解しました。多くの日本企業が二代、三代、そしてそれ以降も存続できる理由は、そこにあると思います。

 

ビジョンおよび使命を守り続けるリーダシップの強さに加え、会社に対する日本人従業員の極めて強い忠誠心もまた重要です。経営陣と従業員は、会社が置かれた状況が良くても悪くても、業績が好調でも不振でも、力を合わせて懸命に働き、会社の運営に満足しています。

 

12月に私の会社は、2017年の成長に向けた事業計画を策定しますが、その計画に盛り込むことができる多くの着想および新機軸をこのHIDA研修プログラムから得ました。私にとっては、事業経営の改善方法を見いだすための「新たなエネルギー」のようなプログラムでした。

ご協力ありがとうございました。