『成功するためには、人材育成や組織自体の発展に加えて、製品ブランドがとても重要』 ~エジプトのLED電球・照明器具の商取引会社社長に聞く
2016年12月13日(火)14:45
(Egypt/エジプト)
Al-Rabie Lighting社
Mr. Sherif Sayed Abdelgawad Mahdy (Owner/General Manager)
Egypt
HIDAが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。
今回、エジプトで主にLED電球や照明器具等取引事業を営む参加者にお話しをうかがいました。
-まず初めに、御社の会社概要についてご紹介ください。
私は当社の所有者かつ創始者であり、私にとってのビジネス経験の全てはこの組織でのこれまでの14年間であり、当社が直面している課題は主に二つの点で表現できると思います。
第一に、私の経営スキルや知識、経験は、当社の成長スピードより速く成長していかなければなりません。そうでなければ、私が当社の成長の妨げとなってしまいます。
第二に、現在の組織内における各部署の明確なレベルや役割、組織内で広く浸透している参加型経営哲学があるにも関わらず、組織は依然として多くの物事を私に依存していることです。
この問題を解決するために、私は二つの手段で取り組んでいます。一つは、当社がより良い方向へ向かって経営できるように、私自身が学び、経験を積んでいこうとしています。そのために私は本研修プログラムに参加しに来たのです。また、私の経営知識を高めるために現在、MBAを取得している最中です。
組織が成長するにつれて、より多くの経験豊かなマネジャーを我々は雇用できるようになりました。それにより、私はより多くの責務や職務を引き渡すことができ、そして彼らは私が行うより上手く行うことができるのです。また、私は当社を株式上場企業にして、会社の所有と経営を分けていくことを目標にしています。
-現在の海外ビジネス展開状況を教えてください。
当社は海外展開をしてはいませんが、中国とは過去12年にわたって品物を輸入しており、商取引関係があります。そして中国は今、我々の新しい工場建設を支援してくれています。我々はヨーロッパでもドイツやイタリアなどの企業から部品を調達していて、ビジネス関係があります。今のところ、日本企業とは取引関係はありません。
-今後、更なる海外ビジネス展開をお考えですか?また海外ビジネス展開を成功に導くために、貴社が大切にしている事、重視したい事は何でしょうか?
我々は、2018年には当社製品をスーダンやケニアといったアフリカの国々に輸出する計画です。成功するためには、人材育成や組織自体の発展に加えて、製品ブランドがとても重要であると信じています。
-貴社ビジネスが属する、自国におけるマーケットの状況について教えてください。
エジプト革命の影響で2011年以降、エジプト経済は減退しています。さらに2013年に起きた軍事クーデター後には、経済情勢はますます悪化しています。通貨は2年前の価値と比べて60%以上も下落し、今や為替レートは安定せずに日々変わり、ある週には10%も上がることもあります。この不安定さがビジネスにおいて非常に害を与えるのと同時に、中央銀行は金利を20%まで上げました。
通貨問題により、政府は輸入量を減らす規制を打ち立てました。それは当社の主要事業に関連するのですが、輸入品への外貨の提供を銀行が行わなくなりました。そしてこれら全ての要因が事業をより困難にし、リスクを高めているのです。通貨問題や輸入規制は今、政府が取り入れて奨励している生産分野へと人々を向かわせています。そういうわけで、我々は来年には自社工場の操業を開始していきます。
市場競争はさほど激しいものではありませんので、我々はまだ、まずまずの利益を得ています。しかし現在の本当の課題は、誰がこの厳しい時期を生き抜いていけるのか、誰が倒産していくのかということです。同産業には100社以上の競合企業が存在します。そして我々のマーケットシェアは、同セグメントにおいて10~15%程度です。
当社製品は「Bareeq(バリック)」というブランド名で販売しています。我々のマーケットシェアは少ないですが、他社製品と比べると高品質な製品を提供しています。通貨切り下げや以前と比べて低下している顧客の購買力のため価格が上昇していくときに、どのように自社製品の品質を維持しいていくかが、現在の課題です。
どの競合相手も、各社のマーケットシェアを維持すべく、今は価格を維持するために品質を下げる、あるいはもし難しい場合は価格を上げる傾向にあります。同産業における市場障壁は、特にエジプトポンドの低い価値ということもあり、あまり高くはないと思います。
-自社人材を育成していく上で、どのような点に注意を払って取り組んでいますか?
人材は、組織が有する最も価値のある財産で、この財産を発展していくことはどの組織の成長においても必要不可欠です。中小企業である我々の問題は、外部から研修の専門家を呼ぶことや、当社スタッフを外部の研修コースに参加させる費用です。我々は当社マネジャーを極めて高いコースには参加させられませんし、個人指導者を当社に招くこともできません。社員への研修全ては私自身が行っています。私は知識を我が従業員に伝えていくために、もっと学び、知識を高めようとしています。
-最後に、日本や日本企業についてどのような印象をお持ちでしょうか。日本に来て驚いた事、感動したこと等ありましたら教えてください。
この訪日の全てが実に刺激的でした。日本文化は思いやりと結束の上で成り立っている、というのが私の印象です。これは西洋文化とはとても異なります。また、日本企業のミッションは企業が取る選択にとても影響を及ぼし、組織に属する全ての人たちがそのミッションを信奉しています。これは他のどの国においても見ることができないものであると私は思います。
企業見学では、障害のある方を多く雇用している、とある企業にとても感激し、刺激を受けました。この企業が障害のある方に対して行っていることや、彼らが仕事をする上で適した環境を作っていく技術だけではなく、この取り組みの裏にある素晴らしい意図や努力、一貫性や調和性についても感銘を受けました。
一貫性や持続可能性は、私が日本で訪問した他のどの会社や場所においても感じることができた価値観です。私はこの素晴らしい国について多く知ることができた今回の機会に大変感謝しています。
私には共有したい経験がもう一つあります。来日中の最後の週末に私は東京タワーに行きました。そのとき私は気分がすぐれず、突然気を失って床に倒れてしまいました。周りの人々の反応は本当に素晴らしかったです。偶然、東京タワーのその場にいた医者とその家族が私のところに来て、助けてくれました。彼は、私の滞在先まで車で連れて行こうかと申し出てくれましたが、私はその申し出をお断りしました。すると、私が再び動き、歩けるように回復するまで、彼と彼の妻、そして二人の子供達は私と一緒に時を過ごしてくれました。私は、彼らが私の家族であるかのように感じました。実際にその場にいた全ての人々が私のことを気にして心配してくれました。その医者と彼の家族がしてくれたことは本当に私の心にしみました。そしてこれは、多くのほかの国々では感じることができない思いやりの一例です。