『デザイン、品質、革新、顧客満足の4本の柱からなる自社ブランド「Rocell」』 ~スリランカのタイルや各種内装材製品の製造企業役員に聞く
2016年12月7日(水)13:35
(Sri Lanka/スリランカ)
Royal Porcelain社
Mr. Nandajith Somaratne (Director/General Manager)
Sri Lanka
HIDAが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。
今回、スリランカでタイルや各種内装材製品を取り扱う製造企業を営む参加者にお話しをうかがいました。
-まず初めに、御社の会社概要についてご紹介ください。
Royal Ceramics Lanka PLCは1990年にコロンボから75 km東の小さな村で登記され、1992年にタイル製造会社として操業を開始しました。現在はタイル製造だけでなく、あらゆる種類の内装材製品の製造を含む、内装材デザイン市場を手がけています。同社は、利害関係者の利益の拡大や品質の改善、デザインの刷新に対する取り組みの結果を示し、1994年までに非上場企業から上場企業になりました。当社、Royal Porcelain (PVT) LimitedはRoyal Ceramics Lanka PLCの子会社です。
スリランカで最初の衛生陶器製造工場と、アジアで主要な陶器浴槽事業の一つを導入し、当社は全体的な生活様式の選択肢を与えるという目標を掲げました。二つのタイル製造部門であるRoyal Porcelain (PVT) LimitedとRoyal Ceramics Lanka PLCはともに「Rocell」ブランドの下、競合会社やインテリア業界の中で何とか優位に立ちました。
さらに、Rocellはスリランカで陶磁器タイルや衛生陶器の主要な製造会社になるため、2013年に唯一の競合会社であるLanka Tiles PLCとLanka Wall Tilesが所属するLanka Ceramicsグループの企業支配権を取得しました。今日、Royal Ceramics Lanka グループは押し出しアルミニウム、プランテーション、パッケージング、採鉱業への進出を通して、成功し続けています。
Rocellの販売ネットワークは、スリランカ全国にある100以上の販売業者をもつ53店舗のショールーム、オーストラリアにある2店舗のショールーム、オーストラリアとインドに建設中の多数の国際的な販売業者をもつ2店舗のショールームから成り立ちます。今日、Rocell Tiles、Rocell Bathware、Rocell Accessoriesという名前は機能性、独創性、精巧性のトレードマークとなっています。
グローバリゼーションによりあらゆる企業が直面している課題を避けることはできませんが、各企業は乗り越えられる強みをもっていると思います。25年前、当社は小さな会社として出発し、スリランカで最も成功した大企業の一つとなっています。当社の成功は名高いフォーブス誌上で「アジアの売上10億ドル以下の優良企業200社リスト」の一社として、2016年を含め、三度認められました。当社は適度なスピードではありますが着実に成長しており、当社の計画や戦略をもって、これからも成長し続けると確信しています。
当社が今日直面している課題は二つの要素からなります。一つは、国の政情の不安定さや投資プランに関する当社の意思決定と異なる国の政策です。もう一つは安価な製品との競合です。
どの会社にとっても外的要因は制御不能であるため、当社の課題は会社とビジネスの安定を築き、外的要因や脅威への耐性をもつことです。当社が採用した戦略の一つは多角化、および後方統合です。現在、当社はいくつかの事業に進出し、主要な事業で後方統合しました。オーストラリアの豊かな市場に進出するための戦略として、現地にRocell Pvt. Ltd.を設立することで世界進出を開始しました。当社はオーストラリアですでに取り扱い代理店の代表であり、高い評価を受けていました。
競合に対する当社の戦略はブランド力です。当社はデザイン、品質、革新、顧客満足の4本の柱に支えられた「Rocell」という強力なブランドを築きました。当社のブランドは「色やスタイル、気品を加えることで生活の質を向上させること」を約束します。国内市場では、このブランド力で自社製品にプレミアム価格を要求することができます。新製品開発やデザイン開発は当社の主力業務です。毎月、平均12の新製品を導入し、工場は業界の最新技術を用いてグレードアップされています。世界中のどの製造会社と比較しても非常に幅広い製品ポートフォリオを所有しています。
これらの戦略で当社は大成功を収めています。当社の売上および利益は前年比で20%以上の成長を続けています。この成長率に応じて、3年ごとに生産能力の拡大を行っています。Rocellのタイルや陶器浴槽がその不動産の価値や魅力を高めていると特筆している、不動産開発業者が発行している広告を目にすると誇らしく思います。
-現在の海外ビジネス展開状況を教えてください。
2015年にRocell Australia Pvt. Ltd.をオーストラリアに設立したことから、当社はグローバル企業となり始め、現在、インドとパキスタンにフランチャイズのネットワーク作りを進めています。今のところ、当社が輸出している市場は米国、カナダ、南アフリカ、スウェーデン、中東、インド、パキスタン、シンガポール、モルディブ、台湾、オーストラリアです。かつては日本にも輸出していました。
-今後、更なる海外ビジネス展開をお考えですか?また海外ビジネス展開を成功に導くために、貴社が大切にしている事、重視したい事は何でしょうか?
当社の主な輸出市場はオーストラリアです。オーストラリア市場で、当社は約2%の市場シェアをもつ、6番目に大きな製造会社です。現地オーストラリアの製造会社は一社だけで、市場シェアは14%です。市場の63%は、規模の経済性や低エネルギー、低資本、安価な人件費、安価な輸送費用、政府からの輸出助成金を利用した、陶磁器タイルの製造では世界最大を誇る中国からの輸入タイルが占めています。当社はオーストラリア市場では6番目に大きなタイル供給会社ですが、当社の存在をもってすれば、2%から5%に市場シェアを伸ばすという短期目標を達成できると確信しています。当社はメルボルンに大規模なショールームを2店舗開きました。当社の目標はさらに3店舗を開き、オーストラリアの主要な居住区をカバーすることです。
オーストラリアだけでなく、当社は米国やインド、パキスタンへのビジネス拡大を計画し、前述した多くの国の取り扱い代理店への輸出を行っています。日本への輸出再開も切に願っています。
顧客満足度や価値を高める手段として、製品の適切な陳列や販売促進、市場における当社の存在を考えています。そうすることで、海外のビジネスで成功を収めることができます。
-貴社ビジネスが属する、自国におけるマーケットの状況について教えてください。
Royal Ceramics Lanka PLCのグループ会社として、当社は第2のブランドである「Lanka Tiles」の床タイル・セグメントで30%、壁用タイル・セグメントで40%という市場シェアを享受しています。当社はスリランカでは市場リーダーですが、市場シェアの60%は主に中国やインドからの「Rocell」や「Lanka Tiles」よりもはるかに安価な輸入タイルが占めています。
いくらか輸入税で守られていますが、どんなダンピング防止法も強いることはできません。これにより二つの大規模な製造国からの多様な滞留在庫や二流品が増えることで、スリランカがダンピング市場になるという結果を招いています。
2009年に内戦が終結した後、スリランカは多くの建設プロジェクトでにわかに景気づき始めました。過去2年間の成長は減速していますが、当社のビジネス成長へ向けて乗り越えられるほどの十分な成長が現在もみられます。スリランカのGDP成長率は約5%を保ち、1人当たりのタイル消費量は0.6 m2に成長しています。スリランカの生活様式を考えると、これはまだ低く、2020年には1人当たり1.0 m2に達すると予測しています。スリランカには製造会社がもう一社あり、5%の市場シェアを占め、今後成長する力があります。彼らの市場セグメントは当社とは異なり、現在、当社は異なる二つの市場セグメントを扱っているため、彼らが「競合会社」であるとはそれほど考えていません。
輸出市場に主な脅威はみられませんが、一部の国ではグローバル経済の減速がみられます。しかしながら、当社が力を入れている国では、建設産業は安定した成長を示しています。イタリアやスペインなど、高品質なタイル生産でよく知られた国々の経済危機により、現地の50%近くの工場が閉鎖しました。これにより、当社は高品質かつ妥当な価格の代替製品をそれら企業の顧客に供給する大きな機会を得ています。
-自社人材を育成していく上で、どのような点に注意を払って取り組んでいますか?
どの企業にとっても生産性と効率の向上が成功の鍵です。当社では私の管理権限の下、製造施設でTPMとリーン生産方式を実行中です。日本に大成功をもたらした、日本の経営理念を効果的に実施することで、スリランカ企業の業績を向上させ、世界市場で競うことができるようになると思います。この研修プログラムを通して得た知識を活用、共有して、当社の業績を上げる管理体制を実施したいと思います。
コミットメントや知識、忠実な社員は最も貴重な財産です。私は社員の知識や技術を向上させること、達成感を与え、社員の意欲を引き出すこと、意識的に社員に忠誠心をもたせることに取り組みます。
今日のHRDにおける難しさや課題は、業務内容や知識の取得への関心の欠如、個人の成長に対する懸念の増加であり、ほとんどの場合、キャリアアップにつながっていません。HRDにおける最大の課題は、社員個人の目標や成長がキャリアアップにつながるようにすることです。
-最後に、日本や日本企業についてどのような印象をお持ちでしょうか。日本に来て驚いた事、感動したこと等ありましたら教えてください。
トヨタ生産方式と、組み立てラインの生産率を上げるためのその稼働方法には本当に感銘を受けました。これらは独自のものであり、誰もが知っていますが、どのように稼働しているのかを目の当たりにして初めて、そこまでの生産レベルに到達することがどれほど難しいかを実感します。これらの方法によって、トヨタは世界的な自動車産業のリーダーになり、今日の日本経済に貢献しています。
企業見学で訪れることができたもう一つの独創的な製造会社にも驚きました。その会社は硬質金属工場に巧妙な人間味を加えています。創造性と社員による協力により5Sシステムが上手く実行されており、工場内に社員がチームで気持ちよく働ける環境を作り、社員からの提案やコメント、仕事の評価などを奨励しています。本当に素晴らしい職場です。
全体として、私は日本の経営における人への関心度に感銘を受けました。当社はここに日本の経営体制を学び、それを利用できるかどうかを見極めに来ましたが、現在、日本の大企業の多くが欧米式と日本式を合わせた経営理念を実施し、急成長につなげていることを実感しました。私見では、人材が最も価値のある資源であると考え、細心の注意をもって社員を活用する、人間味を備えた日本の経営体制で大企業を経営するのは難しいと思います。この種の日本の経営理念は、中小企業がしっかりした価値観や理念を築くのにより有益であり、それによって中小企業は長期的に経営を続けることができます。しかしながら、社員数が増え、会社が大きく、世界的に成長する上で、欧米式を取り入れた経営理念に移行することは避けられません。