経営者インタビュー

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『製品に付加価値を加えることで当社ブランドへの信頼・愛着を作り出す』 ~タイの宝飾品類製造会社社長に聞く

2016年11月4日(金)13:22

(Thailand/タイ)

 

A One 2007社
Ms. Poonsri Phasuniramol (Managing Director)
Thailand

 

HIDAが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。
 
今回、タイで宝飾品類の製造を営む参加者にお話しをうかがいました。

 

 

-まず初めに、御社の会社概要についてご紹介ください。

 

2007年に設立された我がA One 2007社は、バンコクの南部に位置し、銀や他の金属による宝飾品類の製造を専門に行っています。我々は、デザインから鋳造、仕上げ加工、そして最終的に梱包まで、業務の全範囲を行う施設を稼動しています。我々が開発・製造し、梱包している製品は、OEM生産としてデパートなどで販売されているようなプライベート・ブランドの宝石製品で、我が社の工場はそういった製品製造に適しています。従業員が現在20名の中小企業である当社は、宝石用原石や模造ダイヤ、水晶、または白鉄鉱を付けたイヤリング、足輪、ペンダントや指輪、あるいは原石等を付けていない製品も製造しています。当社の製品の大部分はアメリカに、またヨーロッパにも輸出しています。

 
-会社を経営していく上で、どのような事を特に大切にされていますか。理念や方針など、大切にしていることを教えて下さい。
 

当社の経営哲学は以下の点を重視しています。
 
人材:
従業員は事業における大切な財産です。従業員なくしてビジネスはできません。各従業員の能力や適正さが、ビジネスにおける成功の鍵の一つなのです。従業員それぞれが、彼らが組織の一部であることをしっかりと認識する必要があるのです。
 
サービス:
お客様は、まさに従業員と同じぐらいに重要なビジネスの一部です。お客様にどのように接するかは、当社の経営哲学の重要な部分です。製品やサービスは、お客様が実際に認識しているニーズを満たさなければなりません。
 
ビジネス状況は日々変化するが、変化は良いことである:
成功しているビジネスでは当然、変化していかなければならず、変化していく機会を探していくべきであると見なされています。これらの変化とは、ビジネスがより効率良くなり、新規市場への参入、新しい技術の駆使、また下降傾向にある経済の影響を少なくすることを可能とするような変化のことです。

 
-自社事業を更に発展・成長して行く上で、成長の妨げとなっている課題はありますか?またその“課題”に対し、どのような手を打つべきとお考えですか?
 

OEM生産というビジネスタイプの視点から見ますと、我々は絶えず価格面での課題に直面していますが、低価格で競合他社と競合していく以外に選択肢はありません。この下降傾向や景気の低迷が我々のビジネスに反映され、状況はより厳しくなってきています。お客様は少量注文を希望されますが、これはコスト増へと逆戻りし、規模の経済性の観点からは効果的ではありません。この市場は買い手によって影響されてしまうのです。

我々は設計製造業者へと変化していき、さらにブランドを手がける製造業者へと移行して行かなければなりません。我々は自社製品のどこに価値を加え、どのように需要を創出していくかについて考えなければならないのです。強固なブランドイメージの構築を通じて消費者の信頼を高めることが、お客様が競合他社の製品に向かうのを思いとどまらせる事を可能とし、我々のビジネスを発展させていく方法の一つであると思います。同時に、現在のOEM生産タイプのプライベート・ブランド品においては、お客様のニーズを満たす製品やサービスを高めていく必要があります。

 

-現在の海外ビジネス展開状況を教えてください。

 

現在、当社の売り上げのおよそ95%はアメリカ向けの輸出で、残りはヨーロッパに輸出しています。品質やデザインの観点において、我々は現地のあるいは海外企業である他のサプライヤーと競合していますが、価格はいつにおいても課題なのです。

上述したように、ビジネスは概してどこでも厳しいものです。アメリカ市場はだんだん良くなって来ているという人もいますが、我々はあまりよく実感していません。まもなく大統領選挙が行われますが、アメリカ市場での当社ビジネスは依然として緩やかに感じます。
 

-今後、更なる海外ビジネス展開をお考えですか?また海外ビジネス展開を成功に導くために、貴社が大切にしている事、重視したい事は何でしょうか?

 

我々はまだ日本市場には参入していませんが、是非挑戦したいと思います。日本人消費者の好みや気質、文化や購買パターンを理解していく必要があります。日本市場へ参入する前に調べることがたくさんあります。
 
製品品質、よいサービスや競争力のある価格のほかに、デザインや技術の特異性を重要視しています。当社製品に付加価値を加えることで当社ブランドへの信頼・愛着を作り出すことができると考えています。
 
日本企業とビジネスを行うことにおける我々の認識は、品質や顧客サービスが大変重要であり、我々はこれらのことを最も強調していかなければなりません。最適な日本企業パートナーを探すことが我々のビジネスにおいてプラス効果を与えてくれます。

-貴社ビジネスが属する、自国におけるマーケットの状況について教えてください。

 

タイは宝石や宝飾品において豊かな歴史があります。タイの天然資源や生産能力、そして秀でた技能の全てが、タイを宝石・宝飾品で有名な国にしているのです。しかしながら、高コスト体質や弱い製品開発力のため、タイの競争力は高くありません。タイの宝石・宝飾品市場における競争は激しく、価格競争がさらに激化していることから、近年では多くのメーカーが廃業しています。
 
我々にとっての競争優位性は、知見や専門技術、適正価格での高い品質やお客様への配送サービスとなりますが、これらの優位性がお客様との良好な関係を構築しているのです。いかなる変化にも十分に適応できるように、我々は柔軟でいられるように努力しています。

 

-自社人材を育成していく上で、どのような点に注意を払って取り組んでいますか?

 

人的資源開発は常に我々の最大の関心事で、人が重要であるという考えに重点を置いています。様々なセミナーや研修を通して、経営陣の我々や当社スタッフがスキルを発展していくことに投資していくことが重要であると信じています。我々はデザインをテーマとした社内ワークショップを行っていますし、また、その他の必要なスキルや知識は政府関連団体などの外部団体が行うセミナーを通して学ぶようにしています。
 
他の課題としては従業員候補者があげられます。地方にある当社工場で働いてもらう、適正でかつ能力のある人々をどのように探していくかが、人的資源開発における大きな課題です。
 
さらに、セミナーに参加するメリットを感じない従業員が時にはいるように思えます。仕上げなければいけない業務はセミナーに参加してもそのまま残っていますので、セミナー参加後に戻って業務に取りかかるより、業務時間中に仕事を終わらせることを好むのです。例えそうであっても、従業員に手当てを与えてでも、彼らの知識向上のためにセミナーに行くようにモチベーションを高めるようにしています。

 

-最後に、日本や日本企業についてどのような印象をお持ちでしょうか。日本に来て驚いた事、感動したこと等ありましたら教えてください。

 

日本人は親切で優しいので、私は日本人が大好きです。日本の企業はしっかりと組織化されていますし、細部にまで気を配り、年長者を敬います。この文化により、組織内の人々は上司や経営者に敬意を表していて、会社にとっては良いことです。日本人だけでなく、日本の文化や食事にも私は感心しました。

ご協力ありがとうございました。