経営者インタビュー

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『日本を含めた海外ビジネス拡大を目指して』 ~スリランカの水産加工・輸出企業役員に聞く

2016年10月5日(水)09:20

(Sri Lanka/スリランカ)

 

Jay Sea Foods Processing社
Mr. M. D. C. Asoka Perera (Quality Assurance Director)
Sri Lanka

 

HIDAが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。
 
今回、スリランカで水産加工・輸出業を営む参加者にお話しをうかがいました。

 

 

-まず初めに、御社の会社概要についてご紹介ください。

 

当社は1979年に水産製品取引会社として設立されました。本社はコロンボにあり、工場はコロンボから約25 km離れたところにあります。工場には1995年に水産加工施設を導入し、1997年にEUの承認を得ました。当社では現在、水産加工・輸出業を営んでいます。年商は約2000万米ドル、従業員は125名で、中規模企業になります。さまざまな種類の魚を扱っていますが、主なものはマグロ(メバチ/キハダ)、メカジキ、マカジキ、キングフィッシュ、マヒマヒ、バラマンディ、それにハタやタイなどのサンゴ礁に棲む魚などです。

 
-会社を経営していく上で、どのような事を特に大切にされていますか。理念や方針など、大切にしていることを教えて下さい。
 

我々はリーダーシップを発揮して従業員を指導し、進むべき方向を示しています。


当社の経営哲学は、従業員の生産性を高める環境を提供する、というものです。コンフリクトマネジメントを通じ、士気を高く維持して、パフォーマンスの悪いスタッフを激励したり、パフォーマンスの良いスタッフに報奨を与えたりして、その実現を目指しています。

 
-自社事業を更に発展・成長して行く上で、成長の妨げとなっている課題はありますか?またその“課題”に対し、どのような手を打つべきとお考えですか?
 

[課題]

  1. 適切な原材料(魚)が入手しにくいこと、顧客の要求に比べて年間を通じて入手できる量が少ないこと。
  2. 漁獲量の減少による購入価格の上昇。
  3. 海で獲ってから工場に輸送するまでの不適切な扱いにより生じる品質(鮮度)の低下と、それに伴う収穫高の損失。

 
[課題に対する対応策]

  1. 魚の種類や、内陸での魚の養殖/海産養殖(海で育つ魚、海での小魚の養殖)製品を多様化させる必要があります。
  2. 原材料をより大量に入手できれば、販売価格も下げることができます。
  3. 荷積みプロセスから工場での荷下ろしプロセスまで、実際に魚を扱う担当者の研修を行う必要があります。これは現在実施中です。

 

-現在の海外ビジネス展開状況を教えてください。

 

2015年から2016年6月まで1年半にわたり、EUからスリランカ海域の魚の輸出を禁止されました。現在、輸出禁止は解除され、EU加盟国からの注文が増加しています。
 
これに加え、当社は2010年までEUのGSP(一般特恵関税制度)+の適用を受けていましたが、スリランカは一部のEU要件を満たすことができなかったため、現在は対象外になっています。当社では、2016年末までに再び以前のようにGSP+の対象になれることを願っています。GSP+は厳しい条件付きの免税制度で、スリランカ政府はEUの要件を満たし、国内の問題に対処することに合意しているため、1年以内に再びGSP+が適用されることを期待しています。GSP+の対象となれば、関税優遇を生かしてより大量の魚を輸出できるようになります。
 
当社は現在、主にEUのオランダ、ドイツ、イタリア、イギリスと、スイスに輸出をしています。日本市場にも輸出していますが、今のところその割合はごくわずかです。

 

-今後、更なる海外ビジネス展開をお考えですか?また海外ビジネス展開を成功に導くために、貴社が大切にしている事、重視したい事は何でしょうか?

 

現在、業務をロシア市場、さらには日本市場にも拡大することを計画しています。
 
少なくとも、固定の購入価格を交渉できることが必要です。事前合意は非常に重要で、これはEU諸国や他の地域では行われていますが、日本市場では行われていません。価格が常に変動するため、固定の購入価格を交渉することができないのです。
 
当社では長年、はらわたを取り除いた刺身用のマグロを丸一匹の形で供給しています。日本には競り市場があり、価格が変動するため、一貫性のある供給で利益を維持するのが困難です。そのため、ツナロインやステーキ、切り身(日本語では「サク」)などの加工品や、鮮魚あるいは冷凍魚の形での業務を拡大する必要があります。

-自社人材を育成していく上で、どのような点に注意を払って取り組んでいますか?

 

ある分野においては、マネジメントを変えていかなければならないと感じています。求人募集のプロセスや従業員への研修方法などは改めていかないといけません。


また生産性を高めるために、工程能力や他の活動に関する製造ラインのある領域のための新しい方針を、我々は打ち立てていく必要があります。方針を実施するときはまずその方針内容を展開し、ドラフトを適切に作成してから、それに基づいて手順を作成していきます。そしてトップマネジメントによって実行される前に最終的に方針を吟味され、承認を得ていきます。方針を立てた後も方針を常に改善し、必要な更新を加えていく必要があります。

 

-最後に、日本や日本企業についてどのような印象をお持ちでしょうか。日本に来て驚いた事、感動したこと等ありましたら教えてください。

 

日本はとても美しい国です。台風などの自然災害が起きたとしても、危険性のある災害に対しても、日本の高い技術が最新情報を提供してくれますし、私にとってはとても安全に住むことができる場所だと思います。これにより、皆が災害に対して注意させることにつながり、皆が安全に生活していくために必要な予防措置を取らせているのです。実際に、HIDA東京研修センターに滞在していた研修コース中に台風が上陸し、コースの他の皆とともに身を持って体験しました。
 
また日本企業はCSR活動にそった最新の品質要求を満たす、とても高い基準を維持しています。そのため日本企業は、世界のほかの会社が品質問題を克服し、高い基準を維持していく手助けになると思います。他の会社も日本企業を訪問し、日本企業が実践する総合的品質管理(TQM)や日本企業独自の基準を高めている諸活動を学び、理解することで、彼らにとってのベンチマークとすることができると思います。
 
日本人のおもてなしはスリランカ人のおもてなしに大変近いものがあります。それゆえ今回の日本滞在の二週間、私は家族や友人と一緒にいるように感じました。
 
最後に、美しい国・日本で品質管理やTQM実例を学ぶ機会を与えてくれたHIDAに感謝申し上げます。また私の日本滞在中にサポートしていただいた本コースに携わった全ての講師陣やTKCスタッフの方々に、さらには私のコース参加のために時間と参加費を提供してくれたJay Sea Foods Processing社の社長に感謝申し上げます。

ご協力ありがとうございました。