専門家の声 インドネシア(ジャカルタ)

葛貫 賢治 専門家
インドネシア(ジャカルタ)
派遣期間:2019年7月1日~2019年9月15日
指導内容:インドネシア縞タコの加工技術に関する指導

効果的な指導方法

私の派遣先は、インドネシアのジャカルタになります。これまでも28回ほど定期的に訪問していますので、インドネシア人との付き合い方にはある程度の知識はありましたが、専門家での仕事は初めて。戸惑いながらも指導をスタートしました。派遣先の工場では、今回指導する製品の特長や、工程、品質管理方法等を理解してくれる専任スタッフの教育から始めました。1つずつ丁寧に教えていきますので、時間も労力もかかります。

まず、マニュアルを作成するのですが、そちらも、日本語からインドネシア語に翻訳して、1工程ずつマニュアル作成します。食べ物ですから、同じ品質になる様細かな時間、温度、重量、カット工程等全て文章に起こします。その通り生産しても毎日原料の品質が違うので、微妙に品質がぶれます。その場合、最適な状態にするまで、繰り返し行います。その地道な作業を行う姿を見たスタッフからは、「なんで日本人はそこまで細かいの」と言われながら行っていました。

指導の様子

ある時、指導した事が守られていなく「この前教えたでしょ」と言うと、忘れた、と答えてきたので、なんで、と思いながら振り帰ると、彼らはこちらの書いたことをメモしない事が多いのです。それではすぐには覚えられないし、間違った加工をしかねないとの事で、作業手順毎に大きな張り紙を作成し、その紙を工程毎に貼り付け確認しながら作業すると、皆スムーズに手際よくできる様になりました。その紙を見ながら、現地専任スタッフも自信をもって作業員に指示する事ができ、うまく指導できたと思い、お互い喜びを感じる瞬間であります。

最終製品を皆で試食し、美味しくできると、食べながら美味しさを共感でき、感謝の気持ちでいっぱいになります。

印象的な習慣や文化、宗教

派遣中にインドネシアで大きなイベントが2つあり、貴重な体験をする事ができました。

1つは、犠牲祭といわれるイスラム教の大きなイベントで、コーランのお話から信仰を示すため牛やヤギを生贄にしてカットし、皆で分けて食べます。命をいただく事に感謝する儀式があります。牛は20万~30万円、ヤギは2万~3万円で取引されています。

朝お祈りをして午前中に生贄にされます。カットされた肉は貧しい人にまず分配され、その後家族や知人と分けます。その肉を調理して皆で食べます。先ほどまで生きていた牛やヤギがすぐに食卓に出るのは、かなり抵抗ありましたが、これもインドネシア人との交流と思い、食を共にしました。イスラム社会での慈善行為という事で、非常に大事な儀式である事を認識できたことは良い体験と思いました。

ヤギのスープ

2つめは、8月17日のインドネシア独立記念日です。太平洋戦争前はオランダに統治され、戦争中に日本が占領。その後日本の敗戦を受け晴れてインドネシアは独立できました。今年は74年目という事で、いたるところで、インドネシア国旗を掲げて、同じ服装をして、独立イベントを楽しみます。

運動会みたいな催しがいたるところで行われており、老若男女みんな笑顔で参加します。クルップ(えびせんの様なインドネシアスナック)を手を使わないで食べる、日本でのパン食い競争みたいな競技や綱引き、木登り競争など、色々な競技があります。見ていて飽きがなく、景品も用意されているので、皆必死です。

インドネシアの人達は、インドネシアの国が大好きで、独立できたことに感謝し、皆で祝う。日本が占領したのは良くなかったけど、そのおかげで独立できたと、日本人は非常に感謝されます。照れくさいですが、日イ友好のため、恥ずかしながら競技に参加してみました。

 

当寄稿は2019年9月18日発行の「AOTSメールマガジン No.103」で配信されました。