専門家の声 ミャンマー(ヤンゴン)

伊丹直毅 専門家
ミャンマー(ヤンゴン)
派遣期間:2017年11月~2018年3月
指導内容:指導教員における自動車整備技術に関する指導

指導で困った点と解決方法

私の指導先はヤンゴンで技術者を育てるトレーニングセンターです。

市内に2か所校舎があり、私の指導先は自動車整備のみですが、本校の方では電気や溶接、テレビや携帯電話の修理などのトレーニングを行っています。日本の2年間の2級自動車整備士養成課程のうちの1年目に沿って自動車の構造作動原理から整備方法までを指導しています。

しかしながら、この国の義務教育課程は授業が午前か午後の半日しかなく、高校教育まで併せても10年間しかありません。従って、情操教育や、理科、工作等の授業が全くありません。高校卒業生(16歳)に母親の絵を描いてもらうと、まるで日本の5歳児が描いたかのようです。物事の特徴を掴み、表現する事が、彼らの生活全てに於いても非常に苦手です。また、理科の授業が全く無いので、自然現象を知りません。自動車には自然現象を利用して動かしている装置が沢山あります。この様な事を小学校の教師になった気分で辛抱強く指導しています。

母親の絵

また、自動車整備手順に於ける価値観もまるで違い、驚きます。ヤンゴン市内で開催された技術コンテストに日系チームと共に参加しましたが、参加20チーム中17位、18位と惨憺たる結果でした。理由はあまりに素早くテキパキとする作業を見て、「ケガをしたり、滑って転んだりする」との事で、危険行為での減点だそうです。

あまりの驚きで声も出ませんでした。日系チームのトレーナーと2人でガックリうなだれて、我々の指導を完全否定された気になりますね…と話しました。日本の常識を受け入れて貰えるようになるにはまだまだ時間がかかりそうです。

技術コンテストにて

技術コンテスト会場の様子

現地スタッフの心をつかむ方法

私は出来るだけ現地の人達と一緒に過ごすようにしています。

多くの日系企業駐在員やその他の方々は常にワイシャツとスラックス、そしてコミュニケーションは通訳を介して、また現地食は口に合わないと言って日本食レストランのみで、現地の方達と本当の意味での繋がりが薄いと感じます。

そこで私は様々な行事には積極的に参加し、昼食はいつも現地スタッフや学生と一緒に取り、はたまた夕食も週の半分共に過ごす様にしています。

深く関わる事で彼らの思う世界観や将来に対しての夢や希望と言うのも聞く事が出来ます。それに対して我々がどの様に関われるかの判断基準にも繋がると感じます。一方的に価値観を押し付けるのではなく、お互いに理解し納得の上で行う事が必要ではないかと感じます。

また、夕食の際には普段は決して話さない本音もお酒が入り、時々バクダン発言したりします。飲みニケーションは世界共通です。

いつも同じ昼食メニュー

現地での日々のひとコマ

学生とスタッフと飲み会で

スタッフと昼食

スタッフとコミュニケーション

スタッフの結婚式にて

スタッフの結婚式にて

当寄稿は2018年5月16日発行の「AOTSメールマガジン No.86」で配信されました。