専門家の声 タイ(チョンブリー)

久保田直樹 専門家
タイ(チョンブリー)
派遣期間:2017年6月~2018年3月
指導内容:玉掛けにおけるクレーン及びフォークリフトの操作効率向上による省電力化に関する指導

指導先企業の様子

私の指導先企業は「工作・一般機械等の搬出・運搬・移設・据付・組立・加工・メンテナンス」を行っています。
特に、アルミ成形のダイカストマシンやプラスチック成形の射出成形機などの重量物(機械)の取り扱いを得意分野とする会社です。

私は「玉掛け・吊り機材/フォークの操作性・効率性向上技術の導入による省エネ化・CO2削減」を指導しています。日本において、玉掛けなどは安全第一で効率的に実施するのは当然のこと。重量物を扱う派遣元企業においても、作業進捗の要諦を占める部分でもあり、慎重かつ迅速に行うことが常態です。

しかし、派遣国のタイにおいては、あくまで私の経験則ながら、安全第一の意識はあるものの、経済性・効率性などは比較的重視されない傾向にあり、「結果できればOK」という認識の様子。

玉掛け、地切りによる大型機械移設の様子(1)

簡単に言えば、最終的にできれば良く、そのプロセスを考えることはありません。よって、出来るまで玉掛けのポイント(重心)を探し続け、同様にクレーンなどの重機利用もトライアンドエラーを繰り返す。

つまり、省エネ化・CO2削減とは程遠い現状にあります。(もちろん、経済合理性が全て正しい訳ではありませんが…。)

現場の課題に取り組む

現場スタッフは、これまで軽量物の玉掛け、吊上げの経験はありましたが、その経験だけでは重量物を安全に吊上げることが困難であると感じており、指導の必要性が高まっていました。指導先企業に入り、まずは、座学および指導先企業の工場内においてトレーニングを実施しました。

現地スタッフが肌感覚で分かっていたことを、現地・現物を活用してその論理や理由も踏まえて説明。その結果、勘の鋭いスタッフは呑み込みが早く、地切り(吊上げ)をする前のチェーンブロックによるワイヤー調節をする回数が少なくなり始めました。

そこで私は、スタッフを2チームに分けて、玉掛け・地切りの効率競争の提案をしたのです。いきなり日本スタイルの経済性や効率性などと言っても現場スタッフの理解は得がたいと現地MDからもアドバイスを貰い、僅かながらの景品(日本からお土産)を提供して競争会を盛り上げました。現場スタッフも楽しみながらも、真剣に取り組んでくれました。

玉掛け、地切りによる大型機械移設の様子(2)

双方向性で「遊び」心のある指導を

最終的には、現場スタッフとの一体感も生まれ、より私の言葉に耳を傾けてくれるようになったという期待以上の結果も生まれました。もちろん、その後本来の目的である経済性・効率性を意識することにより、コストも削減でき、当然ながら、安全性も向上することを伝え、より理解を深めて貰えるようになったと感じます。

指導は今後も続きますが、一方通行で日本スタイルを伝えるのではなく、今回のような少し「遊び」のある指導も念頭に置きながら、人間関係も構築しつつ、指導先企業の成長・発展に寄与できればと考えています。

現地従業員と一緒に、笑顔の久保田専門家(右から2人目)

現地従業員の誕生日を祝う

当寄稿は2018年1月17日発行の「AOTSメールマガジン No.82」で配信されました。