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1. 最近の労使問題の特徴と理由
(1) 最近の労使紛争の特徴
中国の社会主義市場経済の発展と共に、大きな成果として誇れるものに、協調的労使関係がある。それは、労働契約に基づいた雇用メカニズム、労使対等の協議に基づく団体協約を結ぶ企業レベルの協調的労使関係、労使の三者メカニズム(政労使)の暫時的改善、労使紛争のプロセスの改善のことを指している。
中国では労使紛争に関する法や規定として、主に、労働法、労働契約法、労使紛争の調停・仲裁法、企業の労使紛争の交渉・調停に関する規定などがある。
協調的労使関係促進の成果があるにも拘わらず、労使紛争は過去10年、連続的に増えている。(テーブル1を参照)
年 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 |
数 | 155 | 184 | 226 | 260 | 314 | 447 | 500 |
%増 | 14.4 | 19.1 | 22.3 | 15.2 | 20.5 | 42.3 | 11.9 |
年 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 |
数 | 693 | 875 | 1287 | 1315 | 1403 | 1497 |
%増 | 38.6 | 26.2 | 47.1 | 2.2 | 6.7 | 6.7 |
一般的に経済的利益が多くの労使紛争の焦点となっている。 報酬、社会保険、労働契約の終了がしばしば労使紛争の主な理由となっている。 様々なタイプの外資系企業や合弁企業で労使紛争が増大している。 その理由は、これら多くの企業が従業員に労働集約的な労働を課していることに関連している。 私企業の労使紛争も増大している。 低賃金のまま、多くの従業員を雇うからだと言われている。 地域で見ると、大都市のような発展した地域や東沿岸県のほうが、西部地域の遅れた地域よりも、労使紛争が多い。
(2) 最近の労使紛争の主要な原因
中国の経済発展のパターンの変化により、多くの企業が、特に2008年の世界的財政危機の勃発以来、リストラを実施してきている。 この変化は企業の組織構造と経営モデルの変化をもたらし、不利益を被る人達も出てきた。 この人達が正当な報酬を受け取ることができない場合、労使紛争を引き起こす可能性がある。 例えば、過剰生産のトラブルを抱えている国営企業が市場志向の方向に改革をすると、長期雇用の常勤従業員は新しく替わった使用者との労働契約を断念せざる得なくなる。 その結果、報酬に関する多くの労使紛争が発生する。 特に私企業、とりわけ中小企業では、質の悪い経営体制が、従業員の報酬、賃金、残業代等に関する労使紛争を生じさせる。 また、労働法や規定を無視する企業や、労働者と正規の労働契約を結ばない企業、特に地方の移動労働者が多い企業も同様なことが言える。
労働契約法、労使紛争の調停・仲裁法が広く周知されたことにより、労働者は自分たちの権利保護に対する意識や法的手段を通じた利害の関心が高くなっている。 紛争が同じ利益を有する多くの労働者に影響を与えれば、集団的紛争に発展するだろう。
制度的理由により、労使関係調整のメカニズムは、中国の経済発展のスピードよりはるかに後れを取っている。 企業、特に中小企業は、労使紛争仲介委員会を設立していないため、労使紛争の防止、相談・解決する効果的なメカニズムがない。 労使紛争仲介委員会を設立している企業では、労働組合が労働者の利益を代表する組織として十分に役割を果たしていない。 団体協約数は増えているものの、従事するスタッフの業務内容や能力が想定するレベルに達していないため、十分な機能を果たしていないのである。
2. 労使協調を促進する労働組合の役割
(1) 中国の労働組合
中国においてここ数年、労働組合員は増えている。2013年の統計によれば、私企業と公営企業を合わせた653万企業の中に地方労働組合が276万ある。 組合員2億9千万人の労働組合員の内、1億1千万人が地方からの移民労働者である。2013年には労働組合組織率は81.1%となった。
(2) 協調的労使関係における中華全国総工会(ACFTU)の役割
国が社会労働立法の整備強化の努力をしていることから、中華全国総工会(ACFTU)は、この機会を利用して、民主的で科学的な立法制度を促進させるために、全国人民代表大会と国務院関連部門と協働作業部会を設けた。 労働組合は、企業経営者や労働者の意見に耳を傾け、それを立法機関に反映させる作業を行っている。 現在、労働法制度は、コアとして労働法があり、労働契約法、労使紛争調停・仲裁法、社会保険法、安全生産法によって補完されている。
労働者の法的権利と利益を保護するために、様々な労働組合が労働法の実施を監視することで、お互いに協力している。 2013年9月までに91万の労働組合の労働法監視・監督機関と208万3千人の労働法監視・監督者が、労働法施行を促進するために重要な役割を果たした。
中国の労働組合は、労使の集団協議が、労働者に、より高い賃金を実現させ、健全な労使関係を形成させると信じている。
労使の集団協議を合法化した労働法は1994年に公布された。 過去20年、様々なレベルの労働組合は、集団協議を通して労使対等交渉を促進してきた。 2013年までに、632万9千の企業と2億8千7百万人の従業員によって243万の労働協議が締結された。 組合のある80%の企業に集団協議制度がある。
(3) 協議と調停による労使紛争の防止・警告・解決を強調
多くの労働組合は、労働紛争処理に際し、防止・調停と民衆に立った立場を優先している。 労働組合は、従業員には労働協約にサインし、法に沿って自らの利益を要求するように指導し、使用者には経営、特に労働問題をベンチマーク等で標準化するよう要請している。 また、従業員の関心を事前に聴収したり、労使紛争に関する情報を調査したりして、早期発見・報告・防止を行い、紛争を初期段階で解決することに努めている。
労働組合は他の関連機関と共に労使紛争調停制度の改善に積極的に参加している。 2013年までに、1,006,000の企業と27,000の地域に労使紛争調停委員会が設置され、多くの労使紛争を首尾よく決着させている。
(4) 法律相談の実施
中国の労働組合は、労働者と様々なレベルの組合組織に法律相談を提供している。 組合が努力している一つに、労使紛争の調停者、非常勤の仲裁人、労働組合法監視・監督者、法的援助を提供するスタッフ・専門家の人材養成がある。 人材養成を受けた彼らは労働者や組合従事者の知識や能力を高める宣伝・教育活動を行っている。 2013年までに労働組合は、43,000人の職員と64,000人のボランティアからなる14,000の法律相談機関を設立した。
3. 労使を調整する使用者団体の役割
(1) 集団協議制度の促進
全国使用者団体の代表として、中国企業連合会(CEC)は、人力資源・社会保障部と中華全国総工会(労働組合)と協力して、地方の使用者団体や企業が集団協議と集団協約を推進するように奨励している。 私たちは、様々なセミナーやワークショップを通じて地方の使用者団体が集団協約の重要性やその恩恵を認識できるように努めている。 また、地方の使用者団体が協議を行う際の能力やスキルを向上できるよう研修を提供している。
(2) 労使紛争の経験を情報交換するシンポジウムへの参加
2014年4月、CECは、10の地方省の官労史の代表と共に、労使紛争防止・調停の経験交流全国会議に参加した。 この会議で、参加者は企業で起こった労使紛争防止・調停の経験を交流し、労使紛争のメカニズムに存在する問題点に関して議論し、より効率的にこの問題を解決する政策を探った。
(3) 使用者団体の責任
労使協調のための第19回国家三者間(官労史)会議から受けた政策助言の実行のために、 CECは、使用者団体の管轄責任の規格を定めようとしている。会員会社は経営水準を向上させるための標準ベンチマークを作ろうとしている。
労働協約の実行、従業員の満足度、労使関係の安定は、15項目からなる5つの責任分野から構成される標準シートに含まれ、評価される。
責任分野 |
項目 |
スコア |
---|---|---|
ビジネス活動と発展 (300点) |
ビジネス活動 | 65 |
利益 | 60 | |
投資 | 70 | |
経営 | 75 | |
製品とサービス | 30 | |
労史関係 (300点) |
賃金と福利手当 | 70 |
労務管理 | 70 | |
研修 | 30 | |
労働者保護 | 40 | |
使用者保護 | 50 | |
国への貢献 (100点) |
100 | |
資源と環境 (150点) |
環境経営 | 90 |
公害防止 | 60 | |
社会的倫理性 (150点) |
ビジョンと制度 | 50 |
倫理性 | 100 |