Contents ラオスの労働市場 |
1. 労働市場概要
ラオスは2015年の国勢調査によると、人口が650万人、15歳から64歳の生産年齢人口が64%、14歳以下が32%と、ASEANで最も平均年齢が若い国である。人口は2030年には780万人へと増加し、毎年約96,000人の若者が生産年齢人口に加わると予測されている。この「人口のボーナス」による経済への中期的な恩恵と、社会福祉事業の負担減により、より多くの資金を経済開発へ回すことができるようになる。しかし、「人口のボーナス」による恩恵を十分に受けるためには、生産年齢人口の成長と合わせて新規雇用が増え、若者が適切な技能と知識を習得する必要がある。
ラオスの若者の就業率は高く、15~19歳の48.9%、20~24歳の83.7%が就労しているが、若年雇用のほとんどが技能を必要としない低賃金の仕事である。特に農村部の若者は自給農業に依存しており、貧困のサイクルから抜け出すことができない。貧しい少数民族出身の若い女性は、中学校卒業レベルの学力であるため、この状況に拍車が掛かっている。また、5~17歳の全児童の約15%が労働しており、その約3分の2が「児童労働」に分類され、健康や福祉が脅かされている。「児童労働」をしている約94%の児童が学校を中退しているか、学校に入学したことがない。
2. 職業能力開発
ラオスでは技能労働者の不足が深刻である。これは長期的な社会経済開発だけでなく、ASEAN統合においても重大な問題である。ASEAN経済共同体(ASEAN Economic Community: AEC)への加入により中程度または高度な技能を持つ労働者への需要が高まっており、技能労働者の育成がラオスの発展には不可欠であるが、労働市場のニーズと現在の若者の教育・技能レベルは一致していない。最近実施されたASEANの使用者に対する調査によると、ラオスの中学校卒業レベルの労働者の技能が企業のニーズと一致しているという回答は3分の1のみであった。
職業能力・技能レベルの低さの大きな要因として、質の低い基礎教育と低い識字率があげられる。この問題を解決するためには、職業紹介(Public Employment Services: PES)制度や労働市場情報(Labour Market Information: LMI)制度を改良する他、技能認定につながる訓練プログラムの策定が重要である。職業能力・技能レベルを高めるためのさらなる課題として、2つの技能認定制度があげられる。1つは労働法(2014)に基づく制度、もう1つは職業技術教育訓練法(Technical and Vocational Education and Training Law: TVET法)に基づく制度であるが、職業能力・技能の標準、カリキュラム、訓練用資料の開発を支援する制度間の連携不足が職業能力・技能レベルの低さに拍車をかけている。
ラオスはASEAN技能相互承認協定(Mutual Recognition of Skills: MRS)にも参加している。MRSでは、ASEAN加盟国における8つの職業の労働力移動の円滑化のガイドラインが取り決められている。2017年2月時点、ラオスでは煉瓦工事施工職と漆喰工事施工職の2つの職業領域でMRSが有効となっているが、ラオスへのMRSの影響は限定的である。ラオスで煉瓦工事と漆喰工事に従事している労働者の数は約38,000人であり、ラオスの雇用総数の1.3%に過ぎない。
3. 教育事情