AOTS海外労働関係情報メールマガジン 第68号

フランス: 国際シンポジウム実施報告

2017年10月31日(火)に実施したAOTS国際シンポジウム「働き方改革に向けて ~フランスの労働法改正と日・仏労使関係の相違点~」について基調講演ならびにパネルディスカッションの要旨をご紹介します。

AOTS国際シンポジウム「働き方改革に向けて~フランスの労働法改正と日・仏労使関係の相違点~」

基調講演では、Jean–Emmanuel Ray 氏に「フランスの労働法改正と今後の労働事情展望」について、細川良氏(独立行政法人労働政策研究・研修機構 労使関係部門 研究員)に「フランスと日本の労働事情・労使関係の相違点」についてお話いただきました。

基調講演(要旨) :
1982年に始まった労働法改革が今年ついに終着点を迎えた。かつては法が最低の労働条件を定め、産業別協約により労働者が有利になる条件を追加することが出来るだけであったが、1982年のオールー法以降は従来存在した法律・産業別協約に加え、企業別協定(協約)によっても労働条件を設定することが可能になり、同一の産業内においても企業毎に異なる労働条件を設定することが可能になった。

さらに2004年の法律改正により、一部の労働条件においては企業別協約によって産業別協約の適用除外が行えることになった。実際にはこの制度はあまり活用されなかったものの、労働条件を企業別協約によって決めることの道筋が示された。2017年の法改正によって、ついに企業別協約が産業別協約に優先することが原則となった。企業は競争力維持のため、労働者との協約によって賃金、配置転換、労働時間について、いままでより柔軟に決定することが可能となり、また解雇に要するコストが低減された。労働者側からの反対はあるものの、この改正によりEUから対応が求められていた失業率・若年者雇用といった問題について解決が進むことが期待されている。

またこの労働法改革は、新時代の技術革新の登場とそれに伴う働き方の変化に対応することも念頭においている。インターネット技術により、知的労働に従事する者は労働法が想定するような「職場において決められた時間働く」といった働き方にとらわれず、様々な時間に様々な方法で仕事に従事することが可能になった。

企業が労働時間と休憩時間を管理することはもはや不可能であり、「みなし労働時間制」の導入は労働法の限界を露呈するものであった。特に知的労働者にとって仕事とプライベートの区分が難しくなる中、労働者がインターネットから離れる事のできる「つながらない権利」をどう保障するのか、また情報技術により新しく出現するビジネスモデルにどう対応するかが、労働法にとっての今後の課題となる。

 

パネルディスカッション :
パネルディスカッションでは参加された方々から事前にいただいた質問に、パネリストが答える形式で実施しました。主なトピックをご紹介いたします。

これらトピックについて短い時間ではありましたが、パネリストの方々から様々な意見をいただきました。

・ 今後もこの労働法改革はこのまま続いていくか
・ Uberに代表されるプラットフォームビジネスの雇用と労使関係について
・ グローバル企業のフランス支社における解雇規制について
・ 世代、業種、職種によって違う、働き方に対する意識の違いについて
・ 日本人とフランス人の働き方の違いについて

講師の詳細等は、実施報告ページをご覧ください。