AOTS海外労働関係情報メールマガジン 第37号~第38号

Contents

   1. ベトナムにおける三者メカニズム
   2. メカニズムへの参加を高めるソリューションと提案

1. ベトナムにおける三者メカニズム

今日、ベトナムは、その天然資源と良質な労働力によって、ビジネス活動を行う上で最も魅力的な投資先の一つであると考えることができます。新たな世界的なトレンドを受け、また人材育成と管理に関する慣行を踏まえて、より多くの協力の仕組みが応用され、カスタマイズされる必要があります。この記事では、ベトナムにおける政・労・使の三者メカニズムが、関連する機関の間でどのように機能するようになってきたかを概観します。

ベトナムにおける三者メカニズムの概観

三者メカニズムは最近構築され、関連する問題、特に労働問題では非常に効果的な連携となってきました。世界中のほとんどの国々と同様に、このメカニズムは、政府機関、労働組合、使用者団体の3つの要素によって構成されています。政府機関としては労働・傷病兵・社会問題省(MOLISA)、労働組合としてはベトナム労働総同盟(VGCL)があり、ベトナム商工会議所(VCCI)とベトナム共同組合連合会 (VCA)が使用者側を代表しています。これらの当事者間の協力は、公式に法的文書によって規定されてはいませんが、ベトナムVでは、新たに発生したいくつかの労働問題を解決するために、近年、ますます密接な関係を構築するようになっています。
三者メカニズムについて、各当事者は、相互に協力してベトナムにおける労働問題を解決することができれば素晴らしいと述べています。

メカニズムの果たした主な成果

ベトナムは、官僚主導の下で経済開発が進められてきましたが、自立的な経済を構築し、国家の経済発展をもたらすことに対して、民衆の十分な参加を促すことができませんでした。後に、経済主体の自主性を重視するドイモイ政策と呼ばれる経済改革によって初めて経済発展を促進するための新たな風がもたらされ、大きな成果をあげることになりました。労働分野では、ベトナム経済が国際貿易との統合をより一層深化させるにつれて、三者メカニズムは、負の影響を防ぎ労働政策を推進し、企業内の労使間のよりよい理解を促進し、労働問題を解決することに効果があるものとして、知られるようになりました。外国からの投資を呼びかける政策を推進するためには、経済活動システムの複雑さや各国との相違はマネージメントを行うにあたっての困難性を高めることになります。新たな課題に取り組みためによい慣行やマナーが必要となりますが、三者メカニズムは、国家がこれらの困難を克服するための良いツールであり実践的手法の一つです。具体的な成果としては以下の事柄が挙げられます。

— 労働問題にかかわる各当事者は、積極的に政策の立案に参加しています。政府の政策と企業経営の実践の間のギャップを埋めるために、全ての関係者の協議の上で、法定文書に加えて新たな行政手続きが適用されてきました。
— 全国賃金審議会が、現行の全ての賃金制度、基本給、及び給与慣行に関する政策を改訂するため、賃金に関する労働法により、政労使の三者構成により設けられています。
— 労働委員会が、関連する政府機関を調整して労使紛争の防止と解決を目的に、調和的な労働環境の創造を首相に勧告するために2007年に設立されました。
— ベトナム産業界、特に外資系企業において、調和のとれた労使関係が強く推奨されています。
— こうした三者メカニズムの導入などを通して、労使紛争の和解は、労働問題やクレームの解決に大いに寄与しました。
— 労働協約締結の推進
— 広範囲に及ぶ新たな法的文書、管理手順に関する研修及びセミナーの組織化

2. メカニズムへの参加を高めるソリューションと提案

ベトナムの三者メカニズムを機能させる上での主要な課題と困難点

三者メカニズムにおける政・労・使の各当事者は、良好な職場環境の整備と労働慣行の見直しのために、極めて熱心に取り組んできました。しかしながら、各当事者はそれぞれ異なる使命を果たさなければならないという事情のため、例えば、新しい基本給与水準に関する勧告が首相に出された際、国家賃金評議会の関連団体が共通のコンセンサスを得たのに対して、三者メカニズムの各当事者は勧告に対する声明を一本化することができませんでした。また、関連する当事者は、最終会合の後も意見の一致をみることなく、自分たちの立場の提案を貫こうとしましたが、首相が勧告を公式に承認した後は、自分たちの意見を述べ続けることはありませんでした。
この三者メカニズムにおいては、ベトナム商工会議所(VCCI)とベトナム共同組合連合会 (VCA)がベトナムの使用者団体を代表している一方で、労働・傷病兵・社会問題省(MOLISA)とベトナム労働総同盟(VGCL)がどのような活動をしているかは容易に分かります。ベトナム協同組合連合会(VCA)がベトナムの全ての都市と地方で事務所を構える一方で、ベトナム商工会議所(VCCI)は地方支部と駐在員事務所を主要都市にしか持ちませんが、政治構造における重要性と強い影響力の点で、ベトナム協同組合連合会(VCA)を上回っています。従って、中央レベルでの連携は容易に実施することができますが、地方レベルでの連携はまだまだです。

ソリューション及び提案

良好な協力関係を維持し三者メカニズムの実効性を高めるために、以下のことはベトナムがこの協力スキームのためにできることのヒントとなるでしょう。

— 法的規制 : 多くの専門家及び三者メカニズムの全ての当事者の指導者たちは、当事者間の協力を調整する具体的な法令或いは三者メカニズムに関する規則が制定されることを期待しています。
— 連携管理におけるMOLISAの役割 : 労働・傷病兵・社会問題省(MOLISA)は他の二つの当事者との良好な関係を維持し、雇用主と従業員間の円滑な連携及びよりよい職場環境の創出に必要な政策の制定と施行を調整するという役割を認識する必要があります。
— 労働組合は、労働者を代表し、従業員の権利と利益を保護するために、すべての企業に設立されなければなりません。労働組合のメンバーは、従業員に代わって関連する問題を交渉するために、必要とされる技能と交渉手段を身に付けている必要があります。
— 雇用主は、労働組合或いは従業員と定期的に会合を開いて、可能な限り問題が起こる前に解決し、企業活動に対して深刻な影響が及ばないようにするため、従業員の要望や彼らが直面する問題に関して最新の状況を理解しておかなければなりません。また、雇用主は従業員の雇用に関連する全ての政策について確認しておく必要があります。
— 政・労・使による三者メカニズムの全ての当事者は、その能力、特に労働分野における課題や問題をうまく対処する能力を高めなければなりませんし、そのために必要なサポートがなされなければなりません。その上で、三者メカニズムにおいて当事者間での情報共有を進めなければなりません。
— 地元レベルにおける労働委員会の設立の推進が、地方レベルでの労使関係をより確かなものにします。