AOTS海外労働関係情報メールマガジン 第32号~第33号

Contents

   1. 雇用終了(解雇)
   2. 従業員の職場定着

バングラデシュ 製薬業
Mr. Fakhrul Hasan

 当社はバングラデシュ最大の製薬企業であり、1985年以来、市場のリーダーとして製薬業界を牽引している。 当社は1958年、バングラデシュ北部の小さな町で小規模なベンチャー企業として創業したが、先見の明を持った創業者によって安定成長と成功に向けて急進した。
当社は、ダッカのカリアコイール(首都ダッカから60km)とパブナ(首都ダッカから206km)の2ヵ所に13の製造工場を所有しており、いずれも最新の技術を備えている。 また、当社は、バングラデシュ医薬品管理局、英国医薬品・医療製品規制庁、オーストラリア保健省薬品・医薬品行政局、WHOの事前認定を受けている。 さらに、米国保健省の承認前査察も完了している。 また、UNICEFのグローバル・サプライヤーでもある。
当社は、国連グローバル・コンパクト(UNGC)に署名している企業でもある。 CSR活動の一環として、ジェンダー・人種・宗教の平等、児童労働の禁止、人権擁護、汚染のない環境に顕著に貢献している企業であり、慈善活動にも取り組んでいる。 また、国際労働機関(ILO)の条約を尊重し、組合への積極的な参加、障害者の雇用を行っている。
当社は、これまで長きにわたって従業員の職場定着を重視してきており、事実に即して必要と判断されないかぎり解雇は行わないようにしてきた。 当社の経営理念は従業員にとって気持ちよく働けるように練られたものであり、昇進の機会や魅力ある待遇条件と合わせて、長期雇用の基礎を築いてきた。 このことは、当社の持続可能な成長という成功を裏で支えている重要なファクターであると思われる。 このレポートは、あくまで当社の視点に限定して、従業員の解雇と職場定着について述べるものである。

1. 雇用終了(解雇)

当社における従業員の雇用終了の場合は、すべて、バングラデシュ労働法の定めるガイドラインに則っている。 法律によると、使用者は解雇前120日の通知期間を設けることにより従業員を解雇でき、または120日間相当分の報酬を支給することにより即時解雇することができる。 この報酬とは、バングラデシュ労働法にあるように、報酬や手当(賞与、積立基金、勤続手当、利潤分配等)に追加して支払われるものである。
また、労働法は、従業員が常習的に無断で欠勤した場合、使用者はその従業員を解雇できると定めている。 従業員が許可なく、または事前の承認なく、または事前の通知なく11日以上にわたって欠勤した場合は、使用者は以下のような段階的措置を講じる。
 
1) 従業員に対して10日以内に職場に戻るよう正式文書で要請する。これに応対しない場合、
2) 正当な理由を示し7日以内に職場に戻るよう再度文書で要請する。これに応対しない場合、
3) 自動的に連続欠勤の初日より解雇される。
 
過去3年の解雇についてのデータを下記に示す。
 

 

*Number of employees:
 従業員数

 

*Manpower at Plant:
 工場の従業員数

 

*Termination:
 解雇人数

 

上掲のグラフによると、2015年には従業員の0.725%(15名)が解雇されている。

 

当社では、従業員が60歳になった時点で生じる「定年退職」は「解雇」として取り扱っていない。 「定年退職」は「雇用の停止」として取り扱う。 いずれの解雇の場合においても、当社はバングラデシュ労働法を厳格に遵守し、解雇された従業員の権利や報酬に関して非常に寛大な姿勢で臨んでいる。 従って、当社は半世紀におよぶ歴史の中でこれまで一度も訴訟を起こされた経験はない。

2. 従業員の職場定着

当社は、定期的に従業員の離職と勤続勤務に関する調査を行っているが、これを重要事項と位置づけている。 特別に行う取り組みの他、主に、(a)退職時面談、(b)勤続面談、(c)同僚、上司を交えた面談の3タイプの調査を定期的に実施している。 過去4年間にわたってこれらの調査を行ったところ、主な離職理由が、以下のように明らかになった。
 
 

                                           

  1. よりよい就業機会を求めて (Better Opportunity)

  2. より高度な学問習得あるいは留学のため
    (Higher studies-Abroad)

  3. 業務上の理由 (ダッカ工場から就業場所が離れている)
    (Job Issues)

  4. 個人的理由 (Personal Reason)

  5. 通知なき退職 (Left without notice)

 

上掲のグラフに示すように「よりよい就業機会を求めて」を理由に離職する従業員がほとんどである。

市場での競争力を維持するため、当社は数多くの短期的対策および長期的対策をとり、就業機会に関するライバル他社とのギャップを、最小化する努力を行ってきた。 これらの対策を講じた結果により、近年では「就業機会」を理由に離職する従業員は平均7%未満に抑えられている。 また、その他に言及すべき点として、以下の点が挙げられる。

 

1) 報酬・手当システムを見直し、成果による変動制報酬制度を2012/2013期に導入した。
2) 2013/2014期には賞与、積立基金などの長期勤続手当を支給した。
3) 従業員の持つ高い潜在能力を認め開発を促した。このような従業員には勤続に対して特別手当を支給した。
4) 2014/2015期には成長を加速し、昇進の機会を創出するため、役職者が新しく役職に就くことを制限した。
5) 能力開発のため、従業員が必要とする国内外での研修を支援した。
6) 感謝状や賞金によって顕彰した。
7) 独身従業員および家族を持つ従業員が無料で住める住宅を支給し、また通勤用に快適なバスを無料で利用できるようにした。

 

バングラデシュの社会文化的見地からすると、企業でパワー・ハラスメントやセクシュアル・ハラスメントが発生することは通常めったにない。 従って、これらの理由で従業員が当社を退職するということはまれである。 しかしながら当社の経営陣はセクシュアル・ハラスメントを決して容認しないという方針を堅持する。 セクシュアル・ハラスメントの報告があれば即座に調査が行われ、そのような不正事実があると確認されれば解雇の対象となり、法的手続きがとられる。
パワー・ハラスメントが報告された場合には、即座の質問調査に続いて、被害を訴えた者と対象となっている者を交えた公開面談が行われる。 ハラスメントが反復的である、または重大であるなどの状況により、研修、動機付け、報告方法の変更、組織による対策、詳細な調査、懲戒処分などのさらなる処置がとられる。 苦情の処理に関しても同様のプロセスが実施されるが、変化し続ける状況に対応すべく、常に見直しがなされている。