AOTS海外労働関係情報メールマガジン 第26号~第27号

Contents

   1. 無期雇用労働者の雇用終了
   2. 有期雇用労働者の雇用終了
   3. 雇用終了の通知期間
   4. 就労規則違反や雇用契約違反による雇用終了
   5. トルコ法の手続きの特徴と労働環境の特徴
   6. 定年退職による雇用の終了

 トルコ経営者連盟(TISK) 弁護士 Ulas YILDIZ
専門員 Dogac GURSEL

 

「雇用終了」の手続きに関し、トルコ経営者団体連合会(TISK)は特に規制を設けていないが、雇用契約を終了する場合、トルコの労働法および関係法令に従う必要がある。 本件に関し、TISKは、その業務の一環として、加盟企業および関連企業にガイダンスを提供する。

1. 無期雇用労働者の雇用終了

トルコ労働法によれば、雇用契約終了の手続きは雇用期間が無期の場合と有期の場合で異なる。 期間の定めのない無期の場合に雇用契約を終了する場合、使用者は正当な理由(valid reason)を提示する必要がある。 解雇理由が正当でない場合、労働者は使用者に対し、再雇用を求める訴訟を提起することができる。 裁判所より再雇用の決定がなされた場合、労働者は事業所に対し、再雇用を申請をする必要がある。 使用者が再雇用の求めに応じない場合は、当該労働者の4ヵ月以上8ヵ月分以下の賃金に相当する補償金を支払う義務を負う。

2. 有期雇用労働者の雇用終了

 期間の定めのある有期雇用契約の場合、再雇用を求める訴訟を提起することはできない。 有期雇用契約の場合、訴訟を提起できるのは、正当な理由を示さない一方的な解雇の場合である。 一方的な解雇の場合は、通知期間の賃金の3倍相当額の補償金が発生する。
有期雇用契約を終了する場合、使用者は書面により契約終了を通知する必要がある。

3. 雇用終了の通知期間

 また、有期、無期にかかわらず、使用者は正当な理由に基づく雇用契約の終了に際し、一定の通知期間を設ける必要がある。 通知期間は、勤続年数(雇用契約の期間)によって異なる。
通知期間は次のように定められる。

 

a)      雇用期間が6ヵ月未満の場合。相手側より通知を受領した日から2週間。
b)      雇用期間が6ヵ月以上18ヵ月未満の場合。相手側より通知を受領した日から4週間。
c)      雇用期間が18ヵ月以上36ヵ月未満の場合。相手側より通知を受領した日から6週間。
d)      雇用期間が36ヵ月以上の場合。相手側より通知を受領した日から8週間。

 

以上は、最低限求められる通知期間であり、当事者双方の契約により延長が可能である。

4. 就労規則違反や雇用契約違反による雇用終了

労働者による重大な就労規則違反や雇用契約違反は、使用者が労働者に退職手当を支払う必要がない正当な事由(just reason)に該当する。 解雇理由の重大性によっては、通知期間を設けず雇用契約を即時終了することも可能である。 労働者による重大な就労規則違反や雇用契約違反に該当する事例は、トルコ労働法第25条に規定している。 例えば、労働者が雇用契約の前提となるような資格を所有し雇用要件を満たしているとの虚偽の申告をしたり、事実に反する情報を提示したり、発言を行ったりなどして、故意に使用者の誤解を招いた場合などが正当な事由に該当する。

5. トルコ法の手続きの特徴と労働環境の特徴

 企業経営の観点からの正当な理由(valid reason)による雇用契約の終了と就労規則違反や雇用契約違反による正当な事由(just reason)による雇用契約の終了を区別している点はトルコ法の手続きの特徴といえる。
これは、トルコの労働環境における特徴的な一面であり、雇用契約終了に関する訴訟が、在トルコ企業にとって重要な懸念事項である一因となっている。 一般的に、裁判所の判決は労働者または被使用者側に有利な内容となることが多い傾向がある。 これを踏まえ、TISKの加盟団体や関連企業をはじめとする使用者は、契約終了を不服とする労働者からの訴えに備え、不利な判決を避けるため、契約終了の正当性を立証できる具体的な証拠を整えておくことを強く薦めている。
また、人事部や法務部の緊密な連携も必要である。 なぜなら企業や使用者の抗弁資料を作成し、雇用契約終了が正当かつ合法である事を裁判所に対して立証する必要があるからだ。
上記の状況を鑑み、雇用契約終了のプロセスや関連する法的手続きを管理する専用ツールが開発された。 「スマートブック」と名づけられたこのツールは、TISK加盟団体であるトルコ金属産業経営者団体連合会(MESS)によって金属産業向けに開発されたものである。

6. 定年退職による雇用の終了

 定年退職する労働者については、雇用契約が終了となる労働者または被使用者とは異なる面での配慮が必要になる。 法律第1475号は退職手当に関する規定であり、労働者は使用者に退職の意思を表明する義務があると定めている。 労働者が退職の対象となる年齢になった場合、退職の手続きが社会保障の履歴に基づいて行われる。
労働条件に年齢の上限を設けている事業所では、労働者が規定の年齢に達すると、雇用契約を終了することができる。 年齢の上限の妥当性は、労働者の求めがあれば、その客観性および合法性が裁判所によって判断される。