アジアの日系企業における日本人マネジャーの課題 フィリピン

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フィリピン・クラーク経済特別区開発公社

フィリピン・クラーク経済特別区で見られる日本の合弁企業の日本人マネジャーの行動
クラーク経済特別区について

私は、フィリピンのクラーク・デベロップメント・コーポレーションで働いています。 マニラから100kmほどのところにあります。

クラーク・デベロップメント・コーポレーションは、政府の資金が入っている企業で、 フィリピンの法律に基づいて設立されています。クラーク地区での雇用創出と経済活動を活性化するために作られました。

クラーク経済特別区は、灰の中からよみがえった不死鳥のようなものです。 まず、米軍基地の撤退により、2万人以上が失業しました。そしてもう1つ大きな問題がありました。 1991年のピナツボ火山の噴火です。この2つの大きな影響が1991年にあったのです。

この基地は、アメリカ本土以外での最大級の米軍基地でした。 それが撤退してしまい、フィリピン大統領と立法府で、ここを自由港の経済特区とし、 経済活動を活性化していくことを決定したわけです。 約3,300ヘクタールあり、このメインゾーンにほとんどの会社が立地しています。 半導体、衣料品、電子部品工業、ビジネス・アウトソーシングなど、いろいろな企業があります。 約2,200ヘクタールはロジスティクス等の地域となっています。

残りの土地は、観光やエコツーリズムの企業、レジャー、アグリビジネスの地域になっています。 現在のところ4つのゴルフコースがあり、ホテルやヴィラもあります。 ワークライフバランスを達成していくために、このようなレジャー施設なども、このゾーンに用意されています。

クラーク経済特別区から世界を結ぶ

地図を見るとわかると思いますが、クラーク経済特別区は大変よいところに立地しています。 東南アジアの中央部にあります。ほとんどのアジアの貿易拠点へ、3時間以内に飛行機で行けます。 ここはマニラにも、スービック港にも近いです。

ここには511の会社が立地しています。実際の投資実績は、2010年に1億1,300万ドルの投資となっています。 雇用の創出が主な目的であったわけですが、このクラーク経済特別区の雇用創出の実績は、 2011年6月の数字では、62,176人の雇用を創出しています。 アメリカ軍が撤退したことで2万の雇用が失われたわけですが、それを超える雇用が創出されているのです。

 

表1 日本式システム導入による会社のメリット

2011年6月現在

 

表のように、クラーク経済特別区では5億米ドルを投資し、2,321人雇用しているヨコハマタイヤを始め、 37社の日系企業が立地しています。

ナノックスフィリピンでは、半導体の組立や電子部品の製造、販売などを行っています。 LCDなども取り扱っています。ナノックスでは60%を輸出しており、輸出に関して大きな貢献をしています。 SMK電子ではタッチパネル用ディスプレー、ジャック、ピンジャック、キーボード、 リモコンなどの製造、組立、販売を行っており、1,170人の従業員を2011年6月現在で雇っています。 2012年、第2工場を操業する予定になっており、雇用人数は3,000人に上ることが予想されています。

日本人マネジャーの行動

私の仕事は、外国人の方々に労働ビザを手配するための支援をしています。 ですから、ほとんどの海外から来た方々のお手伝いをしています。 フィリピンの日本人マネジャーに関して、 クラーク・デベロップメント・コーポレーションから見た視点でお話しします。

日本のエグゼクティブの方々は、相互信頼を重要視していると思います。 もし信頼が築かれれば、全面的に支援するという関係を構築しています。 またプロトコールを大事にしており飛ばしたりせず、順番に話を持っていきます。 また、改善は有名であり、クラーク経済特別区でも改善は導入されています。

本当に一流の品質を実現するよう努力をしており、規律正しいです。 会社へのロイヤリティについては、会社と一緒に育っていくということを考えています。 若い時から会社に勤め始め、定年までその会社にいる方が多く、ロイヤリティが強い方が多いです。 そしてまた、現地の法律を順守しています。

では、どういったことが課題または挑戦として挙げられるでしょうか。 まず課題として、ハード面とソフト面での技術移転が挙げられます。 技術だけではなく、ソフト面で、 付き合っていく部下との関係をつくるためのスキルというものを移転する必要があると思います。 日本式のやり方でスムーズに仕事が進むということを部下に納得させる必要があります。

一方、ワークライフバランスという考え方も必要です。 フィリピンの雇用者には一生懸命働いてもらわなければならないのですが、 それと同時にワークライフバランスを実現する必要があります。 「ノミュニケーション」という言葉が日本にはあるようです。 フィリピンでは、これが非常に効果的だと思います。 そういう中では仕事の後、あるいは余暇の時間を利用して、 いろいろなことを自由に話すことができます。 そしてフィリピンの風土に合った職場風土の改革ということも必要でしょう。 フィリピン人の仕事に対する倫理、価値観などを理解する必要もあります。 また、いろいろな状況に立ち向かわなければなりませんので、 それに柔軟に対応していく必要があります。 またコミュニケーションも大変だと思います。

欧米人マネジャーとローカルマネジャー

欧米人のマネジャーについては、彼らは非常に成果主義であり、また、細かい指示を与えます。 そして核心をはっきり述べる傾向があります。 業務規程も詳細に決め、目標管理もきちんと行います。また意思決定が早いです。

また、ローカルのマネジャーについてですが、部下に常に思いやりを示す存在です。 ローカルのマネジャーは、部下のことを知るだけではなく、彼らの家族のこと、 またどういうことを悩んでいるかといったことまで考えてあげているわけです。 非常に柔軟性が高く、どういう状況にも責任をもって対応しようとします。

結論として、われわれがやらなければならないことは、 まず日本とフィリピンの様々なギャップを埋めるということなのです。 そのために何をしているかというと、まず、 さまざまな分野で行われているベストプラクティスを取り入れていくということです。 クラーク経済特区では定期的に対話のためのミーティングを開いています。 そこでどういう問題があるのか、 またわれわれ経済特別区の管理者がどういうお手伝いができるかということを話しています。

それと同時に、やはりホスピタリティを維持しています。 そして、派遣されてきた方々が快適な生活を送れるようお手伝いをさせていただいています。 ですから、ぜひ日本企業の皆様にはクラーク経済特別区に来ていただき、 われわれの経済特区を第2の故郷と考えていただきたいと思います。

当情報の取得年月日:2011年11月