AOTS海外労働関係情報メールマガジン 第162号

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ベトナム(第162号)

ベトナム労働市場の現状
ベトナムの労働力
労働者の平均月収

 

ベトナム労働市場
の現状

ベトナムの労働力

2023年のベトナム経済は、GDPが5.5%増、海外直接投資が32.1%増と堅調に推移しています。ベトナムへの外国人渡航者も、2023年はコロナ禍以前に迫る急回復を記録しています。こうした状況下、ベトナム計画投資省管下の統計局のデータによれば、労働力は、665,500人増加して5240万人となりました。安価で大量の労働力が、外国企業をベトナムに引きつけています。しかし、労働力全体の約2/3は、労働力を必要としている都市部ではなく、農村部にあります。外国企業には、農村部の労働力を都市部にさらに移行させるため、賃金、家賃補助といった動機付けを意識することが求められます。

さて、こうした労働力の増加は、ベトナムの人口と、労働年齢人口の増加によるものですが、増加は主に農村部で発生しており、都市部では労働力人口の増加が鈍化しています。

また、産業の観点からみると、サービス部門や工業・建設部門の雇用者が増加しており、特にサービス部門は、ベトナム経済の成長を牽引する主要部門で、今後も雇用を創出していくことが期待されています。反面、農林水産分野での雇用は12万人弱減少しており、このことはベトナム経済が農業から工業へのシフトを進めていることを明確に示しているものと考えられます。

一方、スキルの観点からは、高等教育や職業訓練を受けスキルを持つ労働者の数は、2023年の時点で全労働者の27%にとどまります。労働者の70%以上、約3800万人は、教育や職業訓練を十分には受けていない労働者で、こうした労働者のスキル向上が、世界の中でベトナムが経済的なポジションを上げていくための課題となっています。昨今、ベトナム政府は、半導体メーカーの誘致に取り組んでいますが、この分野の専門知識をもった技術者は、必要な人材数の1/4にとどまるのが現状です。ベトナムにとって、産業人材育成が喫緊の課題であり、政府は、多くの予算を投入し、人材育成に注力しています。

労働者の平均月収

さて、労働者の平均月収は2023年に2022年比6.9%増の710万ドン(約291米ドル)に増加しました。これは、経済の回復と、物価上昇の影響によるもので、最低賃金自体は変わっていませんが、最低賃金も2024年の7月頃には引き上げが見込まれています。賃金の上昇は顕著になってはいますが、しかしながら男女差や地域差は依然として大きく、男性の平均月収は810万ドン(約332米ドル)であるのに対し、女性の平均月収は600万ドン(約246米ドル)にとどまっています。また、都市部と農村部の平均月収の差も大きいままで、都市部の平均月収は870万ドン(約356米ドル)であるのに対し、農村部の平均月収は620万ドン(約254米ドル)にとどまっています。

もちろん、産業における賃金格差も大きく、鉱業が11.2%増して平均月給1,000万ドンになったのに対し、農林水産分野は、410万ドン(約168米ドル)にとどまります。

ベトナム労働市場には、農業部門から高賃金の工業・サービス部門への労働者の移行がなかなか進まないことや、7.63%と高い若年失業率など、依然として課題があります。

政府は、これらの課題を克服するために、高等教育や職業訓練を受けスキルを持つ労働者の数を増やす、第一次産業から二次・三次産業への労働者数の移行を促す、科学技術のイノベーションを促すことなどの計画を立てて、取り組みを進めています。