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1. 最近のタイの労使問題の特徴
タイの労使関係は、企業によって様々である。 企業は、政府による毎年の「優れた労使関係を構築した会社」に贈られる賞コンテストに参加している。 この賞は、経営の透明性を確保し、企業の政策や業務に従業員を巻き込み、従業員の研修を行い、従業員の勤務態度を認めて表彰を行ったりするなどを行い、経営側と従業員の間で優れたコミュニケーション・チャンネルを構築している企業に贈られる。 従業員の労働倫理、責任感、誠実性、仕事の遂行能力も考慮される。
労働現場の労使関係の改善は、政労使の三者協力を通して実施される。
現在のタイの労使関係の最新トピックは以下の通りである。
政府の政策に関するトピック
・労働力の需要供給のミスマッチの改善
労働力の需要供給のミスマッチとは、新卒労働者と労働市場の間のミスマッチである。 政府は労働市場リサーチ局を立ち上げ、新卒の労働力供給と産業界の需要、将来の労働力需要、需要供給のミスマッチを減らす有効な対策等について数多くのリサーチを行っている。
・最低賃金300バーツ/日の影響
2012年1月から最低賃金は、政府によって全国均一に300バーツに標準化された。 このことは、様々な規模の産業に大きな影響を与えた。 例えば、小規模企業や地元企業の間の従業員獲得競争の激化が、ビジネスを廃業する大きな原因となっている。
・労働組合間の競争
労働組合間の競争が始まり、責任を十分に果たさなかったり、組合幹部と組合員間のコミュニケーションが十分でない組合は淘汰されるだろう。
・より安全な職場環境を作る労働安全管理基準
労働安全管理協議会(OHSC)基準による労働者の健康安全に関する法律の施行が行われている。 OHSCは、企業が安全基準を守り、担当委員や安全管理官を任命し、より安全な職場環境を作ることで、労使問題を発生させているいくつかの原因を減らすような方策を企業に義務付けている。
・移民労働者に対する労働問題の宣伝普及促進
ワークショップを開催し、ミャンマー、ラオス、カンボジアの移民労働者に関する労働規定、労働契約、その他の関連課題を宣伝普及促進している。 (2014年10月1日から3月31日までに1,072人が参加した。)
・移民労働者の実態調査
2014年10月1日から3月31日までに21,731の企業を調査し、134,275名の移民労働者が雇用されていることが判明した。
・労働省による労働市場と労働データの主要指標の提供
労働省は、国家労働データベース・センターを設立し、労働市場、社会構造、産業の発展と変化、ジョブとスキルの需要に関する広範で詳細な情報を提供している。 また、労働契約、雇用終了、失業、紛争に関する主要な指標の提供( http://warning.mol.go.th )は、労働市場と新卒者の需要供給のミスマッチ調整に役立つだろう。
・ILO第87条、98条に関する公聴会
ILO第87条、98条に関する公聴会が進行中である。 両方の条項とも使用者及び従業員団体の結社と運営の権利、および組合員になる権利と組合をサポートする権利、政府職員の組合結成の権利、ストライクの権利、労使紛争のプロセス等に関する課題を扱っている。
企業におけるトピック
・高齢者人口の増大
2013年では11.3%が高齢者であり、20年以内に高齢者は2倍の1,770万人となり、全人口の25%に相当すると言われている。 政府は、ソーシャル・ワーカーの定年を65歳-70歳に延長した。 多くの企業が貴重な労働力を確保するために契約ベースで退職者を再雇用し始めている。
・アセアン経済共同体とグローバル化
技術の発展は、労働者に生涯学習とスキルの向上を要求するようになった。 企業は、アセアン経済共同体やグローバル化に適応できる労働者、すなわち、コンピュータ等の技術スキル、文化、言語コミュニケーション能力がある労働者を必要としている。
・移民労働者の労使関係
多くの企業が、移民労働者のコミュニケ―ションを助けるために社内に翻訳家や語学教師を雇用している。 文化・言語教育は、政府の資金によって行われ、数が増大している移民労働者がよりよく適応できるように企業のオリエンテーションが実施されている。
2. 使用者団体の役割
ECOTは下記の活動を通じてよりよき労使関係の実現を目指している。
・コンサルタント・サービス
労働法、労働問題、労使関係、人事労務、給料、福利や他の労働関連問題に関して会員や顧客にコンサルタントを提供する。
・公労使の三者会談に参加
労働政策の課題や改正に関して、政府、従業員、県、地域、国際会議で代表して使用者側の声を伝える。 現在の労働状況に関する課題や懸念に対し、使用者側の立場を反映して伝える。
・ノレッジ・センターの設置
労働関係法の新しい規制、政策、施行、人事管理、労使関係、及びビジネスや職場に関する変更情報を共有化する。
・政府、従業員、使用者とのネットワーク化とそのサポート
よりよき労使関係のために、三者間のネットワークを構築し良好な関係を維持することを通して、 あらゆる労働関連分野に使用者団体が関わるようにする。