海外産業人材育成協会(AOTS)は、国際経済協力、特に日本への研修生の受け入れや海外における研修、技術指導等のための海外への専門家派遣、海外の教育機関における寄付講座の実施など、開発途上国を始めとする海外諸国の産業人材の育成という重要な技術協力を担う一般財団法人です。1959年に民間ベースの技術協力機関、財団法人海外技術者研修協会(AOTS)として設立され、初年度に43名の海外技術研修生を受け入れて以来、財団法人海外貿易開発協会(JODC)との合併も経つつ、国内における産業人材の源である民間企業等と連携しながら60年以上にわたり精力的に活動を続けてきました。機械、自動車、電気電子などの産業技術や品質管理、生産管理などの経営管理、さらに近年は低炭素・ゼロエミッション技術、デジタル・トランスフォーメーション(DX)や人工知能(AI)の活用などの幅広い分野で産業人材の育成を行い、地域別の実績を見ても当初のアジア中心から、近年重点的に取り組んでいるアフリカも含めて世界の開発途上国等に広がり、当協会の日本及び海外における研修生は、累計約45万人に達しています。
また、こうした民間ベースの技術協力において、当協会は人と人との絆を築くこと、互いに等しい関係で共に成長していくことを重視し、海外諸国との友好を育み、強化してきました。その結果、帰国した研修生による45か国・地域における74のAOTS同窓会が自主的に設立されるに至っています。このユニークな同窓会の存在と、同窓会によるAOTS事業とのパートナーとしての連携、現地での日本語教育、いわゆる5Sに関する国内大会の開催などの活動は、当協会の活動の大きな成果の一つとなっております。
昨今の企業活動のグローバル化が進展すると同時にグローバルなサプライチェーンの一層の連携によるレジリエンス(強靭性)の向上が求められる状況はもとより、「グローバルサウス」という言葉に象徴される開発途上の国々が経済的及び政治的な重要性を増す中、当協会のミッションである「人材育成を通じ、「共に生き、共に成長する」世界の実現を図る」ことは、ますます重要になると考えております。
エンジニアや経営層を始めとする「産業人材の育成」を中核に、従来の技術協力に加え、第三国としての開発途上国も関わる協力、日本人材のグローバル化支援、外国人材の日本社会での活躍支援などの事業を通じて今後とも海外、国内で必要とされる産業人材の輩出に貢献し、当協会の活動の目的である「我が国と海外諸国の相互の経済発展及び友好関係の増進」の実現に尽力する所存です。
2020年以来のコロナ禍において、人と人との繋がりに支えられた当協会の事業はリモートによる本格的な研修の実施など新たな展開を図りつつも大きな影響を受けました。コロナ禍からの回復にとどまらず、当協会の活動の更なる発展のためには国内外の関係の皆様のご支援が欠かせません。皆さまの倍旧のご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。
一般財団法人海外産業人材育成協会(AOTS)
理事長 吉田泰彦