『廃タイヤに付加価値を与え新たな製品として生み出す』 ~エジプトのゴムリサイクル・製品製造会社のCEOに聞く
2019年3月20日(水)15:00
(Egypt/エジプト)
Marso Chemicals Co.
Mr. Samuel Mofeed B. Abdalmalek (CEO/ Administrative & Financial Manager)
Egypt
AOTSが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。
今回は、エジプトにてゴム製品の製造及びリサイクルを行う企業のCEOにお話をうかがいました。
リサイクルが当社の強み
Marso Chemicals Co.は1970年にカイロで設立され、1988年にシャルキーヤに移転しました。 当社は、ゴム製品のリサイクルおよび製造を行っており、主な製品は自動車マット、ゴム床材、静電気対策マット、不燃床材、ジム・スポーツ施設用床、自動車用ゴム製予備部品、橋梁耐振動エラストマーベアリングなどです。顧客は主に自動車産業です。
当社は、二部門に分かれており、一つは、自動車用部品など、より安全性の高い製品を純正のゴムから生産する部門です。もう一つは、リサイクル部門で、古タイヤや廃タイヤを回収し、ゴム製品を再生しています。廃タイヤに付加価値を与え、衣料や自動車マットなど新たな製品として生み出すのです。この業界には、リサイクル製造を行う業者が少ないため、リサイクルは当社の強みとなっています。各製造ラインにおいては、競合他社がいるのですが、リサイクルを含め全体で見ると競合相手と呼べる企業はありません。
モチベーションを生むのは金銭だけではなくコミュニケーションである
長期雇用を目指して、社員が満足する職場環境づくりを心がけています。全ての階層および製造ラインにおける全社員は、耐久性のある高品質な製品を作り、また業務効率を上げるために、研修を受け経験を積むことが必要であると考えます。
新入社員が入社する際、または社員が操作したことのない機械を操作する際は、技術研修を受け必要なスキルを習得させます。彼らは、技術研修の他に安全研修も受けます。
ラマダンのシーズンには、エジプトの北部からカイロ周辺の街に多くの人々がやって来ます。我々の町も大変混雑します。このため社員には政府所有の工場職員用住居に住まわせ、その後、政府から家を購入し自分の持ち家を所有するように促します。また、ラマダン中は、彼らに食事を用意することもあります。
社員をあらゆる危険から守るために最善の努力をし、彼らのやる気を高めて、質の高い製品が生まれるように努めています。モチベーションを生むのは金銭だけではなく、コミュニケーションであると私は信じています。ですから、社員とは出来るだけコミュニケーションをとるよう心がけています。
高需要に応じるためには輸入が必要
エジプトでは、ここ2年間、大規模な建設事業が進められています。そのため、国内市場において、我々の業界の製品に対する需要は非常に伸びています。当社にとって古タイヤは、リサイクルの原料として大量に必要なのですが、過去10年の間、ある大手企業が市場に参入し大量の廃タイヤを回収し燃焼させて、燃料精製を行っています。このため、エジプト国内において廃タイヤの需要は急増し、価格は劇的に上昇し、当社の製造コストも上がりました。
一方、ヨーロッパなどの競合他社には、タイヤのリサイクルに対する補助金が自国政府から交付されます。エジプト政府は、昨年4月に輸入に関する法律を制定したのですが、未だに施行されていません。この苦境を乗り越えるためには、タイヤの輸入が必要なのです。
さらに、2016年11月、IMFからの融資合意のための条件を満たす目的で、政府が新たに導入した自由変動相場制により、エジプトの電力コストは過去3年間で急上昇しました。燃料や電気などの全ての経費は2倍近くに上がり、中でも労働賃金は急上昇しました。
海外企業との合弁事業を望んでいます
エジプトでは、労働法や税法のような法律の内容が、数ヶ月に一度のような短期間で改訂されています。このような改訂は、各産業部門にとって、サプライヤーとして投資展望の予測が出来ないため、不安定な環境を与えてしまうことになります。
当社は、生産の15%を中東諸国およびヨーロッパに輸出しています。シリアの崩壊前は、輸出の60%をシリアに輸出していました。現在は、大幅な内需拡大のため、輸出にまわす分が不足しています。
当社は、海外の自動車製造企業と合弁契約を結びたいと考えています。世界経済がそうであるように、エジプトも徐々にリサイクルに向けて動き始めています。2~3年のうちに、この業界は安定するはずです。
実際にどのように取り入れているのかを見てみたい
今回、初めて日本を訪れました。私は、仕事を長期間離れることが出来ないのですが、今回のAOTSプログラムは、私が望んでいた短期のものでした。
このプログラムを通して、日本の企業が導入しているシステムについて学び、シックス・シグマを実際にどのように取り入れて労働力とコストを削減しているのかをこの目で確認することが出来ればと思います。