『ビルド・ビルド・ビルドプログラムに参加したい日本企業を待っています』 ~フィリピンの建設会社社長に聞く
2018年12月14日(金)10:00
(Philippines/フィリピン)
RSP Lim Construction Co., Inc.
Mr. Rogelio San Pascual Lim (President/ General Manager)
Philippines
AOTSが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。
今回は、フィリピンにて建設会社を営む会社社長にお話をうかがいました。
“Boni Tower”が2014年成功事例大会にて受賞
RSP Lim Construction Co., Inc.は、家族経営企業です。1994年の設立当初は、一般の建設・エンジニアリング会社としてスタートしました。そして、2018年6月、“AA”グレードの建設会社として格上げされました。また、先週(2018年7月)、当社はISO 9001:2015を取得しました。1994年から民間物件の建設を行ってきましたが、今年は、政府の建設プロジェクトに積極的に挑みました。日本も同様ですが、フィリピン政府は、近年、国内に鉄道や空港などの大規模なインフラ開発を進めています。
当社の力の源は、私の家族一人ひとりの力です。私と妻は土木技術者で、妻はさらに当社の副社長および会計も担当し、宅地建物取引主任者でもあります。長女は弁護士で、宅地建物取引主任者と不動産鑑定士の資格を持っています。長男は建築士で宅地建物取引主任者、次男はIT技術者です。また彼らは不動産開発業も行っています。現在、我々が建築し、2014年成功事例大会にて受賞された画期的な緑色のビル「ボニ・タワー」の賃貸業も行っております。
社員に「一生ものの仕事」を
当社は、時間厳守、正直、誠実を社是としています。人材育成を行うにあたり、社員は会社の基盤であるということを常に重視しています。設立当初からいる社員が、未だに当社で元気に働いてくれていることが私の誇りです。もちろん、彼らには若い頃より緩和された業務内容を任してはいますが、私達が長年築いてきた深い信頼関係のもと、業務に従事してくれています。一方で、最近、フィリピン政府が主催するプログラム「ビルド・ビルド・ビルド」のため、悲しいことに技術者の離職率が劇的に増えています。これに伴い、有能な人材が不足するという問題が起きています。これに対し、優秀な人材を獲得するため、より高い給与を支給する建設会社が国内に増えており、これがコストを跳ね上げ、ほとんどの場合は収益が上がらないのです。
我々にとって、いかに社員を鼓舞するかが課題ですが、今回私がAOTSのプログラムから学んだことで、ある方法を見つけることが出来ました。フィリピンに帰国したら、社員に対してアンケート調査を行い、10年先のビジョンを聞いてみるつもりです。彼らの夢、夢を実現させるために会社に期待すること、会社のために諦めていることなどについて聞いてみます。私は、社員に一生ものの仕事を提供したいのです。そのためには彼らの願いを知ることが必要なのです。
政府関連のプロジェクトを増やしています
近年、フィリピンの建設業界は過去に例を見ないほどの急成長を成し遂げており、今後はさらに成長が拡大するものと見込まれています。政府は、全国でインフラ建設プロジェクトを進めようと積極的に働きかけをしており、これが、当社が政府プロジェクトのマーケットシェアを獲得するために、建築グレードを上げることを決意した主な理由なのです。建設グレードのアップグレードと最近取得したISOで、当社は今後、民間だけでなく政府プロジェクト関連の仕事が増えると予測しています。
また、政府は中国や日本など、海外の建設会社とも協働を目的として、積極的に迎え入れを行っています。私は、技術移転により学べることは多くあると信じているので、個人的にはこのような開発方法は歓迎しています。しかしながら、同時に、これらの新たな参入者と市場で競うためには継続的に会社を磨いていかなければならず、競争力を高めるために是非、日本の会社とビジネスパートナーになりたいと思っています。日本の企業とは、非常に長い付き合いがあり、私は以前PCA (Philippine Constructors Association=フィリピン建設業協会)の都市支部の支部長をしていたこともあり、日本の企業のお役に立てると確信しております。
私達は日本企業にとってパートナーになる価値のある存在です
現在、我々は三つの課題に向き合っています。業界全体でも問題視されているのですが、優秀な人手の不足、今後さらに増えると予測される海外建設企業の参入、そして政府のインフラ建設プロジェクトの堕落です。一つ目の問題に対し、私は、地元のアンチ・ドラッグ(反薬物)機関および警察と協力し、薬物使用者に建設業の研修を受けさせる更生プログラムへの提携を結びました。私が、この契約にサインしたのは、単に人手不足を解消させるためだけの理由ではなく、彼らをもう一度学校や社会に復帰させたかったからです。26名が選考され、内5名が溶接工として卒業しました。現在は、2期目の研修生を受け入れています。二つ目の問題については、私は、政府のビルド・ビルド・ビルドプログラムに参加したい海外企業(特に日本企業)にとって、我々が価値あるパートナーになれると証明できる機会を探しています。3つ目に、当社は2018年8月にPCAの国内登録会員になりました。それを機に、私がPCA都市支部長をしていた頃と同様に、何か変化を起こすことが出来ればと願っています。
現時点では、当社の海外進出予定はありません。今は、すでに飽和状態である国内での事業拡大に集中しています。フィリピンに進出し我々とパートナー契約を交わしたいと願う海外の建設会社、中でも日本の企業にとって価値ある存在となれるため日々最善を尽くしています。
政府主催プログラムに参加したい日本企業を待っています
今回の短い日本滞在で、私は、フィリピン政府のビルド・ビルド・ビルドプログラムに参加したい日本の方々に会えることを願っています。フィリピンの専門家達が戦略的な事業計画を作成し、フィリピンでの事業拡大に大いに協力いたします。
日本で学んだことを活かすために、私は、自分の国でさらに時間厳守(時間より前に来る)を強化していくつもりです。これは、最も中核的価値の一つと捉えるべきです。また、物事を先延ばしすることも改善していかねばなりません。会社の管理職会議で私がいつも彼らに言うことは、「どうせやるなら、今すぐやろう」ということです。
今回、私は3回目の来日ですが、日本で触れた人々の礼儀や愛に感動しました。私がここ日本で目にしたことは、毎回、国に持ち帰り、興味を持つ人々に伝えています。私は、フィリピンのロータリー・クラブの元会長や、PCA都市支部の元支部長をしており、Philcultaros(AOTSフィリピン同窓会)の現Executive Vice Presidentをしています。これら全組織で、このような日本の素晴らしい姿勢や心構えを、フィリピンの人材育成に是非取り入れ役立てたいと日々尽力しています。