『今は日本企業と競うことが出来る。私達はもう後続者ではない。』 ~台湾の電子部品製造会社役員に聞く
2018年6月22日(金)10:00
(Taiwan/台湾)
Unimicron Technology Corp.
Mr. Peng Shih-Yu (Sr. Director, Quality Management Division)
Taiwan
欣興電子股份有限公司
彭士祐(Carrier事業處經營部 協理)
台湾
AOTSが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。
今回は、台湾で電子部品を製造する会社の役員にお話をうかがいました。
世界ランキング4位
Unimicron Technology Corp.は、1990年に設立された電子部品を製造する会社です。現在27,617人(台湾グループ:13,486人、海外グループ:14,131人)の社員を擁しています。当社では、PCB(プリント基板)製造、実装基盤製造、ICテスト及びバーンインそれぞれに異なる製造戦略グループを持っています。
リジッド基盤、フレキシブル基盤、リジッドフレックス基盤、フリップチップ・チップスケールパッケージ基盤(FCCSP)、高集積パッケージ基盤(FCBGA)など、全種類にわたる基盤を提供しています。あらゆる産業界において強力な顧客ベースを有していることは、当社の強みでもありますが、専門の社員による新製品開発にも余念がありません。また、トップ企業としての地位をさらに確実にするために、主力製品強化のための投資や高付加価値製品への投資も継続的に行っております。
我々は、台湾及び中国において活動領域を順調に広げてきました。最初は、1999年に合併企業として中国に進出し、2001年には中国国内に初めて自らの会社の拠点を設けました。ドイツや日本にも製造工場があります。
Unimicron Technology Corp.は、世界のPCB製造会社の業績ランキングで現在4位を占めており、これまでに達成してきた業務成果もまた我々の強みといえます。今日、台湾には、100社を超えるPCB製造会社が存在しますが、我が社にとって競合他社と言えるのはそのうち3~4社でしょう。
我が社では、分野別に異なる製造グループを有しているため、それぞれの技術、知識、顧客などを共有し、シナジー効果をあげることが可能なのです。全てをゼロから始める必要がないのです。
会社としての目標や経営方針は、世界のトップ企業としての高付加価値製品、高品質製品、高生産性、イノベーション、サービスを提供し続ける会社であることです。また、顧客、社員、株主の満足を追求し、社会的責任を果たすために尽力しています。
当社の2017年~2019年の革新的な企業目標:
- ニッチ市場を狙う(ニッチ製品売上総利益を25%以上に増)
- コアチームの業務を強化
- 優れた人材を育成(多彩な能力を持つT型人材を育成するための研修とローテーション)
- 製品開発強化とインテリジェント・オートメーション(第4産業革命と統計的プロセス制御)
- 経営の革新的改革、グループ間での価値の共有
若者雇用の困難性
当社の人材育成方針は、企業の利益および社員の満足につながる雇用、研修、育成、補償体制を含めたプランを実行することです。インターンを雇用する際は、英語力、IQ、適応能力などについてのテストを行います。雇用の必須条件として、まず大学において物理工学または化学工学を専攻していなければなりません。近年、若者の製造業離れが傾向としてあるため、雇用することが段々と困難になってきています。だからこそ、業務の自動化がさらに求められるのです。
- また、若い有能な社員を会社に引き留めておくことが以前より難しくなってきています。なぜなら、現代の若者は、あまり失敗を恐れないような気がするからです。転職後に失敗をしたと感じても、また元の会社に戻れば良いのだと考えるのです。これは、日本では絶対にあり得ないとは思いますが。
私は、Senior Directorとして、会社に利益をもたらすことが自分の責任であると思いますが、最も重要なことは、私の部下が私の職務を引き継げるよう指導することであると考えます。まず、部下が働ける環境を提供し、次にどのように働くのかを教えるのです。研修としては、以前は社外への派遣がほとんどでしたが、最近では研修の80%が社内で行われています。
我が社の労働方針:
公平な雇用機会-募集、雇用、評価、昇進の全てにおいて差別をしない
思いやりのある待遇-全社員に平等なチャンスと権威を確保する
社員とのコミュニケーション-社員の意見を奨励し、悩みを抱える社員の権利を守る
職場環境の改善-包括的な給与福利システムを提供し、社員の競争力を高める指導を強化する
誠実性-正直さと公正さを大切にする
日本の企業は保守的
我が社の技術、特に実装基盤製造の技術は劇的に進化しているため、今は台湾国内で日本企業と競い合うことが出来ています。我々は、もう後続者ではないのです。顧客は、クラウドコンピューティングのための新5GやAIアプリケーションなど様々な新テクノロジーを求めているため、我が社の受注量は増加しています。それに伴い生産を拡大する必要があるのです。私の見解ですが、日本の製造会社は新たなテクノロジーに関しては、より保守的であると思います。これは、私達にとって大きなチャンスであると捉えています。
台湾以外のもう一つの大きな投資先は、中国です。現在、我が社が中国政府から受ける製品の注文は増えています。中国政府は、セキュリティ上、電子部品の購入は中国国内で行うことを希望します。よって、彼らに半導体販売をするためには中国に拠点を設ける必要があるのです。
以上が、我々の会社が急速に成長した2つの主な理由ですが、同時に、海外および国内からの増える需要に追いつくためには労働力不足を補わねばなりません。現在、中国は、新市場への投資を始めており半導体製造会社の設立を増やしています。それに伴いさらにエンジニアの数を増やす必要があるため、より高い報酬で台湾から人材を引き抜こうとしています。今のところ、まだ台湾国内での給与の方が高いのですが、中国は15年前と比べると約5倍の給与を支払っています。
海外企業との長期にわたる信頼関係
Unimicronはこれまでに、国内および海外の顧客企業と素晴らしい信頼関係を築き上げてきました。主な海外取引企業はアメリカの企業です。
日本企業との取引は、製品によっては増加しています。ゲーム用製品の注文は増えています。
台湾の一般的なビジネス習慣は、顧客第一です。我が社は、特に、品質を順守し、継続的にブレークスルーを生み出し、全世界の全ての会社に対して高度に技術促進する製品を提供します。
EPQM*で学んだことを今後の業務に活かしたい
今回AOTSのプログラムに参加した目的は、日本の企業を訪問し、彼らのTQM(総合的品質管理)を学び、ベンチマーク(基準)とするためです。もう一つの目的は、狩野先生のTQMコースに参加し、以前彼がUnimicronに教えてくださったことの復習をするためです。日本の管理システムを我々の将来の業務に活かしたいのです。
最後に、AOTSでのプログラムを修了した後に感じたことは、日本の企業は労働への姿勢が素晴らしいということです。EPQMに関しての印象は、日本には長年、品質管理の文化が根付いてきたということ、そして日本の人々は、改善のためならばどんなに細かいことも見逃さないということです。
ありがとうございました。
*EPQM(経営者のための品質管理コース)は、TQMの導入と有効活用をお考えの経営トップ層向けに設けられたコースです。