経営者インタビュー

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ネパール・フィンテック産業のパイオニア‐電子商取引をすべての人に ~ネパールでソフトウェア開発を行うICTサービス会社CEOおよびオンライン決済代行会社CEOに聞く(1/2)

2018年3月9日(金)11:30

(Nepal/ネパール)

 

※本記事は2回に分けて掲載します。
 本記事は第1話の掲載分です。
 <第2話はこちら>

 

eSewa Fonepay Pvt. Ltd.
Mr. Subhas Sapkota (CEO)
Nepal

 

F1Soft International Pvt. Ltd.
Mr. Subash Sharma (CEO)
Nepal

 

AOTSが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。

 

今回、ネパールにてソフトウェア開発を行うICTサービス会社(F1Soft International Pvt. Ltd.)のCEOおよびオンライン決済代行会社(eSewa Fonepay Pvt. Ltd)のCEOのお二人にお話をうかがいました。

eSewa Fonepay Pvt. Ltd.-45社の銀行と取引をする最大手決済代行会社

-御社の企業概要を教えてください。
 
Sapkota氏:eSewa Fonepay Pvt. Ltd.は、電子決済代行を行っております。Nepal Rastra銀行(Central Bank of Nepal)からライセンスを受けています。当社は、2012年に設立されて以来、銀行45社、サービス会社1,000社以上、50万の顧客、その他間接的な取引先である250万の顧客を有する最大手の決済代行会社です。当社は、160人の従業員を擁し、ここ数年間で多角的に急成長を遂げて参りました。ネパール国内の銀行45社とネットワークを結び、モバイルウォレット(おサイフケータイ)、マーチャント・アグリゲートサービス、即時決済サービスを扱っております。
 
現在、人々はeSewaのシステムを利用して、モバイルトップアップ、モバイルユーティリティ、航空券手配、オンライン請求、バス乗車券手配、学費納入、金融サービス、ライセンス費用支払い、EMI(Enterprise Management Incentives)支給等に役立てています。
 
ネパール人口の70%は、銀行口座を持っていません。なぜなら、田舎で暮らす人々にとって銀行までの距離は遠すぎますし、口座を開設することも彼らにとっては困難なことだからです。しかし、それらの人々でもほとんどが携帯電話を持っています。だからこそ、我々はモバイル決済システムを普及させたいと思っています。

F1Soft International Pvt. Ltd.-FinTechソフトウェア開発およびITサービス

 

Sharma氏:F1Soft International Pvt. Ltd.は、2004年の設立以降、ソフトウェア開発とITサービスに携わってまいりました。当社は、何年もの間、主に銀行手続きをシステム化するソフトウェアの開発に取り組み、FinTech(ファイナンシャル・テクノロジー)産業へと進出しました。当社は、モバイル決済システム、インターネットバンキングシステム、タブレットバンキングシステム、カード管理システム、デジタルウォレット、オンライン決済ゲートウェイ等、優れた製品を開発して参りました。我々は、初めてネパールにモバイルバンキングおよびモバイルファイナンシャルサービスを導入したパイオニアです。ネパール国内の90から95%の金融機関は、当社の銀行取引システムを最低一つは利用しています。eSewa社にも当社の製品をご利用いただいています。現在、モバイルバンキングの全ネットワークを統合して全ての銀行が取引できるような基盤を構築中です。

 

当社には現在、テクノロジーやマネジメントに関した専門的知識を持った有能な200人以上の社員が勤務しています。腕の良いエンジニアや革新的で創造性豊かなクリエーター達は、新たなソリューションを発明することで、従来の金融サービスの手続きを打ち壊し、はるかに効率的で手頃価格なリアルタイムの取引を可能にするため積極的に取り組んでいます。我々の製品はFinTech業界にイノベーションを起こし、その貢献は様々な国内および海外の団体に少しずつ認められて、2014 International Business Awards(銅賞)、2013 FNCCI Service Excellence Award、2012 Red Herring Top 100 Asia Awardを獲得することが出来ました。 

 

また当社は、ネパール政府およびその他いくつかの組織とも業務提携を交わしており、様々な分野における貧困層の生活の質を改善していくためのソリューション発明および開発に携わっています。イノベーションに集中し続ける一方で、当社の既存の製品やサービス基準の継続的改善にも取り組んでいます。

 

ネパール政府は、昨年、オンライン取引のシステムを導入したばかりで、我が社のシステムに契約いただきました。例えば、ネパールには韓国へ移住する人々が大勢いるのですが、以前は申請をしに行くだけで3から4日がかかっていました。それも今は、オンラインで申請することが出来るのです。

 

当社では、常にマーケットに新製品をもたらすことを重要視しています。6年前、国にまだほとんどモバイルバンキングが取り入れられていなかった頃、当社はすでにモバイルバンキングを開始しておりました。社員全員が、新しくチャレンジ性のある事に取り組めるよう奨励しています。

イノベーションは全員の職務

-企業経営の観点から最重視していることは何ですか?
 
Sharma氏:公平な職場環境をつくり、社員が創造性を持ちイノベーションを起こすことを奨励しています。
 
当社が携わるテクノロジー産業というものは、ビジネスの状況が急速に変化を遂げている分野です。市場の規模も急速に拡大しています。例えば、2009年にインターネットバンキングが初めて導入された当時、モバイルバンキングはほとんど周知されていませんでした。しかし、翌年、モバイルバンキングは急速に成長し普及しました。たったの2年間でネパール国内のほとんどのネット利用者が、インターネットバンキングからモバイルバンキングに移行したのです。政府もデジタルシステム化に取り組んでいます。よって、この産業で先端に居続けるためには、未来を予見していかねばなりません。一人や一つのチームだけに頼って新しいアイディアや製品を考え出すことは困難です。イノベーションとは、全社員の職務なのです。我々は、チームワークを大切にしており、チームとして何かを達成する努力をしています。

 

また当社は、どのマネジメントレベルから出たアイディアでも差異なく重視するよう職場の環境を整えています。当社の社員は全員アイディアをシェアする権利があります。我々は皆、同じ環境にいるのです。

 

Sapkota氏:我々は、支払い処理を簡素化したいのです。非常にダイナミックな市場環境にありながらも、将来への投資や資産を確保できるよう、変化するビジネス環境とテクノロジーに適応し、企業として成長しております。参加型の管理体制と度胸のあるリーダーシップを大切にしています。90%以上の社員は35歳未満で、国際的な教養を身につけている者ばかりです。
 

社員に良い仕事をしてもらうためには欠かせない、快適な職場づくりをする努力を常にしています。経営陣は、社員との直接的な会話や、提案、フィードバック、助言などが常に出来るような体制をとっています。

通信産業に革命を

-現在の市場環境を教えてください。

 

Sapkota氏:ネパールは、人口3千万人の後進国で、GDPは約220億USドルです。過去10年間で通信産業には革命が起き、人口の90%以上が携帯電話を所有しています。モバイル加入者やインターネットサービスの数も増加しました。

 

eSewaは、ネパールで初めてモバイルウォレットによる電子決済を実現しました。ネパール国内での電子決済のパイオニアであり、80%以上のシェアを所持しています。我々は、45社の銀行および金融機関を繋ぐ最大ネットワーク間での即時電子商取引を行っております。最近のライセンス規定として、新規参入企業は、ネパールのセントラルバンクからライセンスを受けなければいけないという規則が出来ました。

 

当社の製品は、海外でも非常に売れる自信がありますので、我々は海外への進出を熱望しています。ネパールと類似した市場特性を持つ新興国への進出を検討中です。まずは、バングラデシュ、ミャンマー、インドです。

低い教養と技術力の不足

-途上国ゆえの課題は何ですか?

 

Sapkota氏:課題はたくさんあります。

  1. 国が定める当産業関連政策の欠如
    ネパールにはモバイル決済(電子決済/代理決済)に関する国が定める厳密な政策や枠組みがありません。Payment Service Provider(決済代行サービス業)として初のライセンスを当社が取得したのもたった2か月前のことです。政府は、この産業に対する明確な開発計画をまだ作成していません。
  2. 技術力不足
    企業として成長するにつれて、技術力のある人材、特にエンジニアやビジネスを学んだ新卒者が必要となります。教育の質の低さや新しい産業であるという理由もあり、我々は常に、求める技術力を有する人材を見つけることに苦労しています。それに加えて、世界的にもエンジニアの需要が増えており、技術力のある人材は良い待遇を求めて国を出てしまうのです。
  3. 金融知識の低さと新技術への順応
    ネパールでは、人々が金融機関にアクセスすることがほぼありません。人口の33%のみが金融機関を訪れます。銀行や金融機関は、都市部にしか存在しません。よって人々の金融知識は低いです。また、我々が提示する価格は、それらの人々にとっては非常に高いものと認識されてしまうのです。また、ネパールの顧客、サービスプロバイダー、政府、その他のビジネス界の人々の新技術への順応性も低いです。これが、各種サービスや業界への電子決済への取り掛かりや受け入れに影響を及ぼしてしまうのです。
  4. 市場と経済の規模
    ネパールの市場と経済の規模は小さく、海外の投資家にとっても魅力的であるとは言えません。

 

Sharma氏:私もSapkota氏が指摘された課題と全くの同意見で、技術力のある人材の不足、才能の流出、新技術への順応性の低さなどは、我が社のようなソフトウェア開発企業にとってもやはり大きな課題となっています。

 

また、識字率の低さも課題です。ネパール国民の識字率は全体の約60%と非常に低く、テクノロジーに関する基礎知識は、さらに低いです。我々の製品は、全てテクノロジーベースですから、将来性は極めて大きいものの、人々にとっては分かりにくかったり上手く扱えなかったりするため集客自体が非常に困難なのです。

 

-これらの課題にどのように取り組んでいらっしゃいますか?

 

Sapkota氏:この状況を乗り越えるため、数々の取組みを行っています。

  1. 参加、発言、ロビー活動をして、ステークホルダーや国の機関(セントラルバンク、財務省、財務統括事務所など)に、当産業のための政策を作成してもらえるように訴えています。
  2. 研修、開発
    当社では、社員に対して定期的に社内でのOJT研修を開催し、職場で必要なスキルや能力を身につけられるようにしています。また、ニーズをもとに、社外や海外での研修やワークショップにも派遣をしています。ネパール国内の大学とタイアップし、学生に対して技術トレーニングや補助をするとともにキャンパス内での雇用活動も行います。
  3. 宣伝とブランド提携
    より多くの人にeSewa社のことを知ってもらい毎日の生活に活用してもらうために、顧客やサービスプロバイダーに対して宣伝活動をしています。すでに事業提携を結んでいる銀行、金融機関、サービスプロバイダーと共に協力して宣伝やブランド提携を行っています。代理店にも呼びかけをし、より分かりやすく、ローカルなキャンペーンをすることで地元の顧客を増やすよう努めています。
  4. より大きな市場への拡大
    我々は、視野を広げ存在を拡大するためにも、より大きな市場であるインド、バングラデシュ、ベトナムに参入しようと積極的に取り組んでいます。
     

Sharma氏:当社でも、OJT研修は取り入れており、社員だけでなく大学生でも参加できるようになっています。さらに、取り組んでいることは、

  1. 魅力的で楽しい職場環境
    社員が、新設企業で働いていると思えるベストな職場環境をつくることに努めています。彼らが斬新なアイディアを気兼ねなく発案出来るよう、常に奨励しています。
  2. 市場リサーチによるローカライズ製品
    低い教養と順応性に対応するために、自社の製品を常に改良することに努めています。違う角度からアプローチをし、製品をよりユーザーフレンドリーにし、使いやすい製品に変えるのです。説明にローカル言語や絵を取り入れるようなマイナーな改良でさえ、製品の受け入れは大きく変わります。
  3. 幅広い宣伝
    我々の製品のほとんどは、市場においてとても新しい物であるため、宣伝には全力を尽くさねばなりません。また、顧客教育も行い、需要を増やす必要があるのです。
     

 

※本記事は2回に分けて掲載します。
本記事は第1話の掲載分です。
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