AOTS海外労働関係情報メールマガジン 第155号

Contents

ガーナ(第155号)

ガーナ使用者団体(鉱山会議所)の活動について
鉱物資源に恵まれているガーナ
深刻な経済危機
持続可能な社会の実現

 

ガーナ使用者団体(鉱山会議所)の活動について

鉱物資源に恵まれているガーナ

西アフリカに位置するガーナ共和国は、チョコレートの原料であるカカオ豆の産地として有名ですが、鉱物資源にも恵まれ、かつて黄金海岸と呼ばれたように、金の産出量は、アフリカで2番目に多く、ガーナの重要な輸出産品となっています。

さらに近年は、原油の輸出も年々増加しており、これに着目した中国が、一帯一路政策のもと、石油精製所の建設を進めています。

深刻な経済危機

 

一方で、ガーナは、コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けて、深刻な経済危機に直面しており、欧州や、国際通貨基金(IMF)からの支援が模索されています。

国際労働関係事業(使用者団体関係)プログラムでは、各国の使用者団体の関係者を日本に招聘し、日本の労働関係諸制度に関するセミナーを開催しています。去る9月に行われた招へいセミナーには、ガーナ鉱山会議所から人事担当者1名が参加しました。

ガーナ鉱山会議所は、ゴールドコースト鉱山会議所として1928年に設立されて以来、鉱業事業者や採掘事業者のための業界団体として、調査や政策提言などさまざまな活動を展開しています。また使用者団体として、加盟企業の労働問題の解決、労使間の協調に向けた取り組みをおこなっていますが、昨今、事業者が、労働者を終身雇用から有期雇用にシフトさせた結果、有期雇用者による労働組合が、現地の経済事情や法律を顧みずにストライキを通じて過大な要求をすることが増えており、複雑化する労使関係への対応が大きな課題となっています。

持続可能な社会の実現

一方、持続可能な社会の実現というグローバルな課題は、自然環境に大きな負荷を加え社会に対する影響が非常に大きな鉱業・採掘業にとって取り組むべき重要な課題となっています。鉱業・採掘事業の従事者はガーナでもほとんどが男性ですが、ガーナの主要産業である鉱業により多くの女性を就業させるために“Women in Mining Ghana”といった民間団体が設立され、こうした取り組みをカナダやドイツ、オランダ政府が支援しています。

さて、日本でのセミナーでは、労働安全衛生・職場環境改善、ビジネスと人権といった、さまざまな課題の解決へのヒントとなる情報に加えて、日本の協調的な労使関係の取り組みを各国の使用者団体の関係者に理解していただくために、講義だけでなく、日本企業への訪問を通じて、労使対話などの実例を紹介しました。セミナーで得た知識を参考に、日本で行われている労使間の話し合いのスタイルをガーナでも試行してみるといった、今後のアクションプランが、参加者から提出されました。

天然資源に恵まれ、大きな発展の可能性を秘めるガーナの鉱業・採掘業界が直面する労使問題の解決に、日本の知見を役立てていただくことが期待されます。